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助成金、補助金について
これから創業をするにあたって、あるいは既存の事業を継続していくにしても必要となるのが資金調達です。
資金調達の方法のひとつとして、国や地方公共団体、その他の公共的団体が企業や個人事業主などの事業者に対して支給するさまざまな助成金や補助金の利用が挙げられます。これらの助成金や補助金を受けることは事業者にとっての大きなメリットになる反面、使い方しだいではデメリットになる部分もありますので、事前によく検討しておくことが重要です。
助成金と補助金について、より詳しく知りたい方は『助成金・補助金の申請を通して資金調達するには』もご参照ください。
助成金・補助金のメリット
返済不要で現金が手に入る
まず、助成金や補助金のメリットは、何といっても後から返済する必要のない現金が手に入るところが最大のポイントだと言えるでしょう。たとえば、元手が100万円しかない状態で起業しようと思っても、この程度の金額では事務所の借り上げや備品の購入などでほとんど使い果たしてしまい、肝心の売上を得るための事業の運営にまではまったくお金が回らないのが通常でしょう。もちろん、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることによって、自己資金にプラスできるお金をつくることも有望な選択肢です。しかし、これから起業するのであれば十分な採算性や将来性があることを事業計画などの資料をつくって明らかにしなければならず、審査のハードルはかなり高いと言えるでしょう。仮にすでに創業していたとしても、創業からそれほど期間を経ておらず実績のない事業者に対しては、金融機関としてもなかなか融資の門戸を開いてくれないのが実情です。さらに、融資の場合には将来的に元金とともに金利も返済しなければなりませんので、意外と金利負担分の金額も無視できません。このような場合に事業にかかる費用の何割かを補助または助成してもらえる制度があれば、事業者にとっては大きな負担軽減となります。
事業計画を見直す機会になる
助成金や補助金を助成する上での副次的な効果として、事業計画を客観的に見直す機会が生まれ、事業の価値を高めることにつながるメリットもあります。ほとんどの助成金や補助金は、黙っていても勝手に事業者の口座に振り込まれるようなことはなく、事業者の側から申請をすることではじめてスタートラインに立つことができます。申請にあたっては所在地や名称、金額などの概要を記載した申請書そのもののほかにも、多くの添付書類が必要です。このような書類に含まれることが多いのが事業計画書や資金計画書であり、これからどのような目的の事業を、どのような手順や方法でしようとしているのか、またその事業にどれほどの費用がかかるのかなどを、書面によって説明しなければなりません。場合によっては助成や補助を決める国や地方公共団体などのスタッフによる書面審査だけではなく、面接・ヒアリング・プレゼンテーションといった形式で、相手側のスタッフと対面して口頭での説明を求められることもあり得ます。いずれにしても助成金や補助金をもらうためには、相手に事業の重要性や効果などを適切にアピールできなければならず、審査を突破するために事業計画書や資金計画書の内容を見直し、ブラッシュアップしていく作業が必須です。このような作業のなかで事業の内容はおのずと洗練され、事業者にとってみても費用対効果に自信が持てるものとなっていくでしょう。そして、難関の審査をパスして晴れて助成金や補助金が得られたとすれば、それだけでも国や地方公共団体などを納得させられるだけの内容をもつ事業として社会的な信用度が増すことになりますので、その後に金融機関から融資を受けたり、その他の公的機関からの資金面以外での支援を受けたりする際にも大きな助けとなるでしょう。
助成金・補助金のデメリット
このように、助成金や補助金を受けることは事業者にとってメリットとなる一方で、デメリットの部分がないわけではありません。
募集期間や目的が定まっている
助成金や補助金の多くはその支給の目的があらかじめ決まっていますし、年中申請を受け付けているわけではなく、特定の募集期間内にだけ門戸を開いているのが通常です。目的によって助成や補助が受けられる条件も決まっていますので、まずは自社が受けられる可能性のある助成金や補助金の情報を窓口やインターネット上のウェブサイトなどを通じて収集し、なおかつ申請を受け付けている期間内に間に合うように、申請書やその他の添付書類を一式揃えておくことが必要です。特に添付書類は事業計画書や収支計画書のほかにも、会社の登記簿や定款、役員名簿や経歴書、法人税や所得税の完納証明書などといったさまざまな種類が求められますし、いちいち役所の窓口に出向く手間と、交付手数料などの若干の費用がかかります。手間と費用をかけても実際に審査を経てみなければお金がもらえるかどうかもわからず、せっかく準備をしたものが無駄足に終わってしまうリスクも否定できません。
申請から時間が必要な場合がある
また補助金や助成金は、必ずしも資金が必要な時期に支給されるとは限らないことが挙げられます。事業者側ではこれから事業をはじめるためにすぐにでも資金が必要と思っていても、実際に入金されるのは申請の上で審査が終わって交付決定を受けた後、つまりは申請から数か月も後になってしまうことは少なくありません。その間は当然ですが事業にともなう支出の機会があればすべて自己資金か借金などでまかなわなければならず、当初の思惑とは異なってしまうことがあります。さらに国や地方公共団体が特定の事業を政策的に支援するために制度化した補助金の場合は特にそうですが、実は事業がはじまったときにお金がもらえるとは限らず、事業が終了した段階でかかった費用の明細を付して支払いを請求するタイプの補助金や助成金さえあるのです。
資金計画が重要
税制面や付帯条件に関連して、かえって資金繰りに詰まってしまうリスクも見逃せません。一般に事業者が受け取る助成金や補助金は益金または総収入金額収入に算入され、原則的に課税の対象です。もちろん損金または必要経費のほうが多ければ課税所得は生じません。したがって、結果として課税対象にはなりませんが、そうでない場合は納付すべき税金が増えることで逆に資金繰りを悪化させてしまう懸念があります。助成金や補助金の性質によっては、本来は課税所得となる利益を将来に繰り延べする、いわゆる圧縮記帳を使うことができる場合もありますので、詳細は顧問税理士などの専門家に相談するのが良いでしょう。
用途が決まっている
助成金や補助金には支給の条件が付けられていることが通常です。例えば、IT補助金であればIT関連の投資以外では使ってはいけません。もしも意図的ではなくとも条件に違反してしまった場合には、受けとった後(使った後)から助成金や補助金を返還しなくてならないことがあり、その場合、資金面での大きなリスクとなってしまいます。
まとめ
助成金や補助金は返済義務が無いため、事業を開始、拡大していく上で大きな助けになることは間違いないでしょう。また、ご自身のビジネスを見直すきっかけにもなりデメリットよりもメリットの方が大きいです。国や自治体がせっかく用意してくれている仕組みですので積極的に活用してキャッシュフローの健全化やビジネスの拡大に役立ててください。
すでに検討されている方は『審査が通りやすい!補助金申請の書き方』もチェックしてみてくださいね。