業務を外部委託するのであれば、下請法に関する知識は必須です。なぜなら下請法の知識がないと、トラブルが起こったり、最悪の場合罰則が科せられたりするためです。この記事では、下請法に関して必要に知識についてご紹介します。
目次
下請法とは
下請法とは、下請取引の公正化や、下請事業者の利益保護のために定められたものです。そのため、発注者側にとっては重荷になりますが、後述するように守らないと罰則が科せられます。
下請法における発注者の義務
書面の交付義務
発注者は、発注の際に下記の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を、直ちに下請事業者に交付する義務があります。
【3条書面に記載すべき具体的事項】
- 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
- 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
- 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
- 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
- 下請事業者の給付を受領する場所
- 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
- 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
- 下請代金の支払期日
- 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
- 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
- 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
- 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法
引用元:公正取引委員会公式HP
支払期日を定める義務
発注者は,下請事業者との合意のもとに,親事業者が下請事業者の給付の内容について検査するかどうかを問わず、下請代金の支払期日を、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める義務があります。
書類の作成・保存義務
発注者は、下請事業者に対し製造委託や修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は給付の内容、下請代金の額等について記載した書類(5条書類)を作成し、2年間保存する義務があります。
【5条書類に記載すべき具体的事項】
- 下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
- 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
- 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
- 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
- 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者から役務が提供された日・期間)
- 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は,検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
- 下請事業者の給付の内容について,変更又はやり直しをさせた場合は,内容及び理由
- 下請代金の額(算定方法による記載も可)
- 下請代金の支払期日
- 下請代金の額に変更があった場合は,増減額及び理由
- 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段
- 下請代金の支払につき手形を交付した場合は,手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期
- 一括決済方式で支払うこととした場合は,金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
- 電子記録債権で支払うこととした場合は,電子記録債権の額,下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
- 原材料等を有償支給した場合は,品名,数量,対価,引渡しの日,決済をした日及び決済方法
- 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は,その後の下請代金の残額
- 遅延利息を支払った場合は,遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
引用元:公正取引委員会公式HP
下請法における禁止事項
下請法における禁止事項は、下記の通りです。
- 受領拒否(第1項第1号):注文した物品等の受領を拒むこと。
- 下請代金の支払遅延(第1項第2号):下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。
- 下請代金の減額(第1項第3号):あらかじめ定めた下請代金を減額すること。
- 返品(第1項第4号):受け取った物を返品すること。
- 買いたたき(第1項第5号):類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。
- 購入・利用強制(第1項第6号):親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
- 報復措置(第1項第7号):下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
- 有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号):有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。
- 割引困難な手形の交付(第2項第2号):一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
- 不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号):下請事業者から金銭、労務の提供等をさせること。
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4https://shikinnosensei.com/60-day-subcontracting-law/号):費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。
引用元:公正取引委員会公式HP
下請法における違反時の罰則
下請法における違反時の罰則は、下記のとおりです。
第10条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は,50万円以下の罰金に処する。
一 第3条第1項の規定による書面を交付しなかつたとき。
二 第5条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。
第11条
第9条第1項から第3項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、50万円以下の罰金に処する。
第12条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
詳しくは『下請け業者にはいつまでに払えば良い?下請法の60日ルールについて解説』をご参照ください。
まとめ
下請法に違反すると、罰則が科せられ、社会的信用を大きく失う恐れがあります。
そのため、下請法は必ず遵守しましょう。