起業に向けた準備を進めていく中で、開業資金の調達は多くの方が頭を悩ませる問題の一つです。
女性起業家の方にとっては、女性向けの助成金・補助金・融資制度はないかと気になるかたも少なくないでしょう。
中小企業基本法では「創業の促進」の項目に「特に女性や青年による中小企業の創業を促進するため」という一文が2014年に追加されています。
これは、政府が経済の活性化に向けて女性・若者の起業・創業を支援する方針であることを示しています。
本記事では、女性起業家が開業資金に使える助成金・補助金・融資制度について解説します。
女性起業家として活躍されている方や、新たに起業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
女性起業家の資金調達方法
ここでは、女性起業家の資金調達方法について「助成金・補助金・融資の違い」や「資金調達方法の選び方」を解説していきます。
それぞれの資金調達方法の特徴や選び方について理解を深めていきましょう。
助成金・補助金・融資の違い
資金調達方法には、助成金・補助金・融資の3つが代表的なものとして挙げられます。
助成金と補助金は、どちらも国や地方自治体から交付される返済義務のない資金です。
しかし、両者には主導する省庁や実施目的において違いがあります。
助成金は、厚生労働省が主導となり実施している制度です。労働環境の改善や雇用対策を目的としており、助成金制度の要件を満たしている事業主は申請するだけで受け取ることが可能です。
補助金制度と違い、審査を経る必要が無い点が特徴です。
一方、補助金は、経済産業省が主導となり実施している制度です。中小企業の活性化を目的として、補助金制度の要件を満たした事業主が制度に申請し、審査に通過した場合のみ補助金を受け取ることができます。
支給額は定額ではなく割合で決まることが多いのが特徴です。
採択されると、「実際の支出の2/3」などといった割合で算出された補助金が多くの場合後払いで支給されます。
融資は助成金や補助金とは異なり返済義務があります。
しかし、金融機関の窓口において随時申込が可能であり、所定の審査を経ることで利率が低い融資制度を利用することも可能です。
民間の金融機関では実績のない起業当初の借入は難しい場合もありますが、日本政策金融公庫などの公的機関の融資制度では比較的柔軟な審査が期待できます。
資金調達方法の選び方
前述の通り、助成金・補助金・融資にはそれぞれ違いがあります。
資金調達方法を選ぶ際には、各制度の特徴を理解して選択するようにしましょう。
女性起業家の方であれば「女性の起業を応援してくれる制度を活用する」「居住地や起業予定の地域独自の制度を活用する」「融資の場合はなるべく低金利の制度を活用する」といったポイントを意識するとよいでしょう。
また、助成金は制度の要件を満たしている事業主であれば、申請するだけで受け取ることができます。
返済不要かつ確実な資金調達が可能であるためおすすめです。
女性起業家におすすめの助成金
ここでは、女性起業家におすすめの助成金制度を紹介します。
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業は、都内の商店街の活性化を目的として東京都が運営する助成金です。
商店街での開業・事業の多角化・事業承継を対象としており、主な条件は次の通りです。
女性であれば年齢制限を受けずに申請できる助成金制度であるため、東京都内の商店街での出店考えている女性起業家の方はぜひ検討してみましょう。
- 女性または令和4年3月31日時点で39歳以下の男性であること
- 創業予定の個人もしくは個人事業主であること(法人、法人代表者は申請対象外)
- 申請予定店舗が都内商店街であること
- 申請予定店舗の開業が各回助成金交付決定日以降であること
- 申請予定業種が公社の定める業種(卸売業・小売業、不動産・物品賃貸業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、サービス業)であること
- 申請時点で実店舗(一般消費者に対して商品やサービスを提供する場所、現物を手に取ることが出来る商店等)を持っていないこと
両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)
両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活の両立支援を目的に、男性の育児休業取得の促進や、仕事と育児・介護の両立に向けた取り組みに対して助成が行われる制度です。
両立支援等助成金には「出生時両立支援コース」「介護離職防止支援コース」「育児休業等支援コース」「不妊治療両立支援コース」などいくつかのコースがあります。
女性の活躍推進に取り組む予定の起業家にとってはぜひ検討したい助成金です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用従業員の企業内キャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成が行われる制度です。
非正規雇用従業員の正社員化や処遇の改善を検討している女性起業家におすすめの助成金といえます。
キャリアアップ助成金は、正社員化支援と処遇改善支援の2種類に大別され、それぞれの取組みに応じて支援が行われます。
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、中小機構・都道府県・金融機関等の資金拠出によりファンドを造成し、その運用益により中小企業者等を支援する事業です。
創業や販路開拓などに取り組む中小企業者等は、ファンド運営管理法人(各都道府県の中小企業支援機関等)に対象事業が採択された後、そのファンド運用益から資金の助成を受けることができます。
地域貢献性の高い中小企業者が対象となっているため、研究開発費用などの資金調達が必要な女性起業家におすすめの助成金です。
雇用関係助成金
雇用関係助成金とは、労働者の職業安定を目的とした助成金制度です。
失業の予防、雇用機会の増大、障害者の雇用、労働者の能力開発などの取組に対して助成が行われます。
多くの助成金・補助金は申請時期や期間が定められており期間外の申請はできません。
一方、雇用関係助成金の場合、対象年度内であれば計画申請はいつでも可能です。
ただし、支給申請については支給要件を満たしてから2か月以内という制約があるため注意が必要です。
女性起業家におすすめの補助金
ここでは、女性起業家におすすめの補助金制度を紹介します。
小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者持続化補助金(一般型)は、小規模ビジネスの持続的発展を支えることを目的として補助金制度です。
一般型は上限金額が50万円とされており、「賃金引上げ枠」に該当することにより優先的に採択されます。
一般型の対象となるのは、「販路開拓・生産性向上に対する取り組みであること」「業務効率化に対する取り組みであること」などが条件とされています。
また、賃金引上げ枠の対象となるのは、「給与支給額の増加」「事業所内の最低賃金の引上げ」などが条件です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、設備投資や働き方改革・賃上げなど、小規模事業者が行う様々な施策への支援策として設けられた補助金制度です。
通常、3~5年にわたる事業計画書を作成する必要があり、「革新的なサービスや商品を生み出す」「業務効率化を図る」などの要件を満たす必要があります。
また、数値目標として年3%以上の付加価値額の増加が要件とされています。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、経済産業省が実施する中小企業・個人事業主を含む小規模事業者向けの制度です。
生産性向上を目的としたITツールの導入に対して、費用の一定割合について一定金額までの補助金が交付されますA類型・B類型という通常枠と、セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入類型が用意されています。
IT導入補助金は、中小企業・個人事業主を含む小規模事業者を対象とする制度のため、資本金の額や従業員の数について制限があります。
制限については業種ごとに異なるため注意が必要です。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継により新たな事業を始める中小企業や、事業の再編・統合によって経営資源の引継ぎを進める中小企業を支援する制度です。
事業承継に伴う費用負担の軽減により、事業承継後の積極的な設備投資を促進すべく、中小企業者の事業承継・経営資源引継ぎに係る費用の一部を補助しています。
事業承継・引継ぎ補助金は、「経営革新」「専門家活用」の類型に分けられ、補助金の上限額については下表の通りです。類型によって補助上限が異なるため、自社が該当する類型について確認しておきましょう。
類型 | 補助上限 | 補助率 |
経営革新 | 400~800万円(上乗せ額:200万円) | 2/3 |
専門家活用 | 400万円(上乗せ額:200万円) | 2/3 |
女性起業家におすすめの融資制度
ここでは、女性起業家におすすめの融資制度を紹介します。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、女性、若年者および高齢者の視点を活かした事業の促進を図る中小企業者に対して支援を行う日本政策金融公庫の融資制度です。
女性、または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象としており、融資限度額は直接貸付で7億2千万円、代理貸付で1億2千万円となっています。
新創業融資制度
新創業融資制度は、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象に、他の融資制度と併用することで無担保・無保証人で借入が可能な日本政策金融公庫の融資制度です。
融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)です。無担保かつなるべく低金利で資金調達をしたい女性起業家には特におすすめの融資制度といえるでしょう。
女性・若者・シニア創業サポート事業(東京都)
女性・若者・シニア創業サポート事業は、東京都内での地域に根ざした創業を支援するために東京都が創設した制度です。
女性、39歳以下または55歳以上の男性で、都内で創業予定の方、または創業後5年未満の方が対象となります。
同制度は信用金庫・信用組合と地域創業アドバイザーの連携による経営サポートが受けられる特徴があります。
創業おうえん資金(横浜市)
創業おうえん資金、横浜市信用保証協会が取り扱う起業家向けの融資制度です。融資上限は3,500万円であり運転資金・設備資金の双方で利用可能です。
申込条件は、起業前の場合「1ヶ月以内に横浜市内で個人事業を開始する方」「2ヶ月以内に横浜市内で会社を設立して事業を開始する方」が対象です。
既に起業している場合「個人事業を開始してから5年未満の方」「会社を設立してから5年未満の方」「個人事業を開始したのち、同一事業で会社を設立した方で、かつ個人事業を開始してから5年未満の方」が対象となります。
まとめ
本記事では、女性起業家が開業資金に使える助成金・補助金・融資制度について解説しました。
助成金・補助金・融資にはそれぞれ違いがあります。
資金調達方法を選ぶ際には、各制度の特徴を理解して選択するようにしましょう。
また、助成金・補助金には地方自治体が独自に実施する制度も多いです。
厚生労働省や経済産業省が所管の一般的な制度に比べて優遇されている場合もあるため、居住地や事業所所在地の地方自治体の情報収集を定期的に行うとよいでしょう。
「資金の先生」では資金調達や税金に関する相談を受け付けております。
女性起業家として活躍されている方や、新たに起業を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。
海外起業の際の資金調達方法をご紹介 助成金・補助金の申請を通して資金調達するには