法人を設立した際には、法人名義の口座を作ることが一般的です。
しかし、法人口座の開設では、審査に落ちてしまい口座が開設できないといったケースもあります。
法人口座の審査に数回落ちたため、開設を諦めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
個人の口座開設とは異なり、事業用の法人口座は開設時の審査が厳しいですが、いくつかの対処法を実践することで審査に通過する可能性を高めることができます。
本記事では、法人口座が作れない場合の対処法について、お金周りのプロが集結して運営している『資金の先生』が解説していきます。
法人口座対策に加えて「ネット銀行は通ったけど実店舗が通らない」「メガバンクの口座」が欲しいという声にも対応しているため、法人口座の開設時の審査に落ちてしまった方や、法人口座の開設を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
法人口座の開設が難しいケース
ここでは、法人口座の開設が難しいケースについて解説します。
以下で説明する内容に当てはまる場合、法人口座開設のハードルは高くなります。ただし、これらの条件に当てはまっていても、必ずしも口座開設ができないわけではありません。
各銀行の審査基準は異なるため、複数の銀行に申し込むことで、口座開設が可能になる場合があります。
また、下記に該当する場合などはマイナス要因となるとされているメディアもあります。
- 「固定電話がない」
- 「レンタルオフィスである」
- 「コワーキングの住所に登記している」
しかし、近年ではスマートフォンの普及により固定電話がないことは珍しくありません。
レンタルオフィスやコワーキングも信頼できる事業者から借りているのであれば問題となることはないでしょう。
株式会社か合同会社かなど、法人形態の違いもさほど気にする必要はありません。
口座開設が難しいケース① 事業内容が明確でない
事業内容が明確でない場合、銀行側からはリスクが高いと判断されるため、審査が厳しくなります。
特に、コンサルなどの無形商材の場合は注意が必要です。
また、マネーロンダリングなどを疑われると、口座開設が銀行側にとってリスクとなるため拒否される場合があります。開業直後の場合は、事業内容をしっかり説明できるようにしておきましょう。
また、法人化前の実績を整理しておくと、金融機関担当者の事業に対する理解が進むでしょう。
口座開設が難しいケース② 資本金が少なすぎる
資本金が少なすぎる場合、「経営が不安定ではないか」「実態のないペーパーカンパニーではないか」と判断されて審査に落ちてしまう可能性があります。
会社法においては、法人設立時の資本金は1円から登記が可能です。しかし、資本金が100万円未満などのように金額が極めて少ない場合、金融機関から信用を得ることが難しくなります。
この場合、経営権の分散に注意しつつ、資本金を増やすなどの対策をしてから審査を受けることをおすすめします。
事業に必要な運転資金の半年分程度を資本金として準備できれば理想的といえるでしょう。
口座開設が難しいケース③ 代表者個人に問題がある
代表者個人に問題がある場合、口座開設の審査が厳しくなることがあります。
例えば、自己破産などの過去の借金問題がある場合、信用性に欠けると判断されるため、口座開設が難しくなります。
また、反社会的勢力との関係がある場合は、完全に口座開設が拒否されることがあります。
法人口座の開設は、個人の口座開設よりも審査基準が厳しいため、金融機関が信用できないと総合的に判断した場合、法人口座を開設することはできません。
代表者個人の問題がある場合は、代表者を変更することで解決できる可能性もあります。ただし、それには手続きや費用が必要になるため、事前に確認しておくことが大切です。
法人口座を開設するための対処法
ここでは、法人口座を開設するための対処法について解説します。
法人口座の開設は、個人口座の開設に比べて審査が厳しく、書類不備や説明不足があると開設が難しくなることがあります。
銀行側とのコミュニケーションを大切にし、しっかりとした資料を用意して、会社の将来性をアピールすることが重要です。
以下で詳しく説明していきます。
対処法① 必須書類以外にも資料を作成しておく
法人口座を開設するために必要な書類は、会社の登記簿謄本や印鑑証明書などがあります。
しかし、これらの書類だけでは説明が不十分となる場合があります。
銀行側から求められる必要書類以外にも、会社の概要や個人の経歴がわかるスライドなどの資料を用意しておくと、審査がスムーズに進むでしょう。
対処法② 銀行側に口座開設をするメリットを提示する
法人口座開設の申込時には、事業や口座開設の目的を明確にする他にも、銀行側に口座開設をするメリットを提示することも有効でしょう。
そもそも銀行は手数料で稼ぐビジネスモデルになっているので、当然ながらお金を貸して利益を上げたいのです。
将来的に融資を受けたいとか、預金をしたいとか、銀行側にメリットがあることを伝えることで、審査が通りやすくなる可能性があります。
対処法③ 将来性をしっかり説明する
法人口座開設の申込時には、会社の将来性をしっかり説明することも大切です。
銀行側は法人の業況や将来性について審査を行う側です。
将来の目標や新規事業の展望、数年後の見込み売上などを熱く語り、会社の将来性をアピールすることで、銀行側からの理解を得ることができます。
オススメできない銀行口座
ここでは、法人口座の開設にオススメできない銀行口座について解説します。
法人口座を開設する際、どの銀行を選ぶかは重要な決定です。しかし、銀行によっては口座開設に際して制限や条件がある場合があります。
また、口座開設だけでなく今後の取引や融資などを考えて慎重に選ぶことが重要です。以下で詳しく説明していきます。
信用金庫は最初はオススメできない
信用金庫は、地域繁栄を目的とした特定地域の会員による出資で成り立つ、競合組織の金融機関です。
信用金庫のメリットには、「創業間もない法人や小規模事業者に対しても親身に相談に乗ってくれる」「都市型銀行に比べて法人口座を開設しやすい」といったものがあります。
また、デメリットとしては、「他の金融機関に比べて金利が高い」「従業員数や資本金の金額によっては脱退しなければならない」といったものがあります。
また、信用金庫で融資を受けるには、原則「信金会員」となる必要があります。信金会員となるには、法人による出資が必要であり、銀行預金とは違いすぐに払い戻しができないという特徴があります。
「信用金庫はオススメ」とよく言われることもありますが、実際にはエリアによって金融機関側の対応は大きく異なります。
開業1年以内やレンタルオフィスを利用している場合、法人口座開設ができないケースも少なくないため、書類を用意したり現地に足を運んだりする時間を考えるとあまりオススメできません。
実体験として、筆者が大阪エリアで創業時に申し込みをした際にはすべて否決となりました。
都市銀行も優先順位は低め
都市型銀行はメガバンクとも呼ばれ、全国的な支店展開を行う大規模な銀行です。都市型銀行のメリットには、「会社の信用力があがる」「高額な融資も対応可能」「全国に支店がある」「海外送金にも対応している」といったものがあります。
また、デメリットとしては、「法人口座開設時の審査が厳しい」「担当者が全国転勤するため、長期的な関係を築きにくい」「口座維持手数料が比較的高額」といったものがあります。
また、アジアや欧米などにも支店や提携金融機関を持ち、グローバルなネットワークを持つ都市銀行もあります。
都市銀行は信用金庫と同じく、法人口座開設にオススメと言われていますが一概には言えません。取引実績が少ない場合や、信用力が低い場合には法人口座の開設ができないケースもあります。
また、銀行によっては口座維持手数料が高い場合もあります。そのため、都市銀行での口座開設が必須でなければ後回しにするのが良いかもしれません。
オススメの銀行口座
ここでは、法人口座開設にオススメに銀行口座について、ネットバンク編と実店舗編に分けて解説します。
法人口座開設には多くの手続きと時間がかかることが一般的で、事業を開始する際には、最初のステップの一つであるため、できるだけスムーズに行いたいものです。
実務上では、ネットバンクと実店舗のそれぞれで法人口座を開設していると、様々な状況に応じて使い分けることができるため便利です。以下で詳しく説明していきます。
ネットバンク編
ネットバンクでオススメの銀行口座には、「GMOあおぞらネット銀行」と「住信SBIネット銀行」が挙げられます。ネットバンクは簡単に申し込みができ、手数料が安い傾向がありますが、窓口業務やATMの利用が制限されることがあります。以下で詳しく説明していきます。
GMOあおぞらネット銀行は、freeeと提携しており、簡単な手続きで法人口座を開設できます。
freeeと連携することで、法人口座開設のための書類の提出が不要になり、審査が通りやすくなっています。
また、実質振込手数料が無料であり、回数も多いためおすすめです。
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住信SBIネット銀行もGMOあおぞらネット銀行と同様に、freeeと提携しており、手続きが簡単で審査が通りやすい銀行口座です。
また、ネットバンキングに特化しており、取引手数料も比較的安くなっています。
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freee(freee)会計はこちら
実店舗編
実店舗でオススメの銀行口座には、「ゆうちょ銀行」と「みずほ銀行」が挙げられます。実店舗は対面での相談が可能であり、取引における信頼性が高いですが、窓口業務やATMの利用が制限されることがあります。以下で詳しく説明していきます。
ゆうちょ銀行は、郵便局で手続きが可能なため全国で利用できます。
そのため、口座開設の手続きも非常にスムーズに進めることができます。また、審査が比較的緩いため、法人化直後でも口座開設が可能な銀行の一つです。
ただし、中小企業倒産防止組合の口座に使えないことや、法人専用のインターネットバンキングである「ゆうちょBizダイレクト」は別途利用料金がかかるため注意が必要です。
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みずほ銀行は、バーチャルオフィスに理解があるため、顧客の規模に関係なく口座開設が可能な銀行です。
(DMMバーチャルオフィスの記事より)
また、小規模法人を応援するため、法人口座の維持手数料が無料となるプランを用意しています。
ただし、口座開設の審査は厳しめであることが多いため、事前に準備が必要です。
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法人化直後でもメガバンクの口座が作れるかも
法人化直後でも、メガバンクの口座開設が可能な場合があります。
筆者の場合、実店舗の銀行は全滅でしたが、みずほ銀行だけは法人口座が開設できました。
信じられないかもしれませんが、信用金庫の審査に落ちてメガバングの口座を開設できることがあるのです。
ただし、審査は個別に行われるため、開設が保証されるわけではありません。
特に、業種や取引内容によっては、口座開設が難しい場合もあるため、事前に確認が必要です。
法人口座を開設するためのステップ
ここでは、法人口座を開設するためのステップについて解説します。
法人口座開設は、手順を踏んで進める必要があります。
銀行によって異なる手続きがあるため、ここでは法人口座を開設するための一般的なステップを紹介します。
ステップ① 準備をしっかり行う
法人口座を開設する前に、必要な書類や情報を用意することが大切です。以下に、必要なものを一覧で紹介します。
- 会社の登記簿謄本
- 会社の印鑑(法人印)
- 代表者の印鑑(銀行印)
- 代表者の身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
- 代表者の住民票(必要に応じて)
- 法人の基本情報(業種、従業員数、売上高など)
- 代表者の履歴書(必要に応じて)
また、銀行によっては、口座開設前に面談が必要な場合があります。
面談の際には、会社の業務内容や資金繰りなど、詳細な情報を提供する必要があります。
なお、先ほど紹介したような難しいケースに当てはまる場合は、事前に改善しておくことが望ましいでしょう。
対処法を実践することで、審査通過の可能性を高めることができます。
ステップ② あえて本命でない銀行口座を複数申し込む
法人口座開設は、審査に合格することが前提となります。
しかし、初めての申し込みで即審査に合格することはなかなか難しいものです。そのため、あえて本命でない銀行口座を複数申し込むことをおすすめします。
2~3の金融機関に申請し、書類の書き方や面談に慣れることで、次の申請で審査に通りやすくなるでしょう。
また、万が一1つの銀行でも審査に落ちてしまった場合でも、再申請するのはハードルが高くなります。
そのため、あえて複数申し込んでおくことで、本命の銀行口座が開設できないリスクを回避することができます。
ステップ③ 紹介した銀行に申し込む
ステップ1と2をクリアしたら、いよいよ本命の銀行口座に申し込みます。
前述の通り、ネットバンクや地方銀行が審査に通りやすいことが多いため、まずはそうした銀行に申し込んでみることをオススメします。
銀行によっては、法人口座の開設に必要な書類や手続きが異なる場合があります。金融機関のHPや電話窓口などで必ず確認するようにしましょう。
申込み方法には、オンライン申込みや郵送による申込み、直接銀行に足を運んで申し込む方法などがあります。
これらも銀行によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
まとめ
本記事では、法人口座が作れない場合の対処法について、お金周りのプロが集結して運営している『資金の先生』が解説しました。
法人口座の開設は個人口座に比べて審査が厳しくなりますが、本記事で紹介した対象法を押さえることで審査に通る可能性を高めることができます。法人口座はネットバンクと実店舗の2種類をそれぞれ持つことで、様々な状況に応じて使い分けることができるため便利です。事前準備をしっかりと行い申込手続きを進めましょう。
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法人口座の開設時の審査に落ちてしまった方や、法人口座の開設を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。