売掛金の未入金が発覚した際には、回収に向けた迅速な対応が必要となります。
売掛金の未入金を放置したり、回収の手順を間違えてしまったりした場合、会社にとって思わぬ損失が発生する恐れがあります。
本記事では、売掛金が未入金だった際の回収方法について、手順やリスクを防ぐ方法を含めて解説します。債権管理を担当されている方や、売掛金の回収でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
未入金の発生時にはまず原因を調査する
売掛金の未入金が発生した際は、まずは原因を調査するようにしましょう。
取引先との無用なトラブルを避けるためにも、いきなり法的な手続きを取ることの無いよう注意しましょう。
また、未入金の状況を放置してしまった場合、思わぬ損害が生じてしまう可能性があるため迅速に対応しましょう。
未入金の原因が自社にないかを確認する
未入金の回収手続きを進める前に、まずは原因が自社にないかを確認しましょう。
請求書の発行漏れや、請求時にトラブルが生じていた等の原因により入金が遅れているケースも考えられます。
未入金の原因が自社にあり、取引先が支払能力を有している場合、原因を解消することにより早期に回収することができます。
未収売掛金を回収する流れ
ここでは、未収売掛金を回収する流れについて解説します。
未収売掛金を円満かつ迅速に回収するためには、いきなり法的措置を取るのではなく、段階的に回収手続きを進めていくとよいでしょう。
電話で催促する
未収売掛金が発生した場合、まずは電話で催促しましょう。
売掛金の入金を急いでいる旨を伝えるとともに、期日を指定して支払を依頼しましょう。
担当者が直接電話に出なかった場合、同様の内容を伝言するよう依頼するとよいです。
その際には、伝えた内容をメモや録音によって記録しておくことが重要です。
記録を残すことによって、後々のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
期日までに入金が無かった場合は、再度電話により同様の内容を伝えましょう。
請求書等の書面で催促
電話による催促を行っても支払われない場合や電話が繋がらない場合は、請求書等の書面で催促しましょう。
形に残る方法で支払の催促を行うことで、より効果的に相手へ意思を伝えることが可能です。
また、請求書の他にも電報を利用する方法もあります。
内容証明郵便で督促状を送る
電話や請求書による方法によっても支払いがされない場合、内容証明郵便で督促状を送りましょう。
内容証明郵便とは、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、日本郵便が証明する制度です。
未収売掛金の回収方法としてはオーソドックスなものであり、民法上の消滅時効を一時的に中断させることができるメリットがあります。
また、支払いを行わない相手に対して心理的プレッシャーを与えることができます。
直接訪問による催促
上記の方法によっても支払いがされない場合、直接訪問による催促も効果的な手段の1つです。
時間や労力はかかりますが、対面により直接相手へ催促できるというメリットがあります。
取引先の会社が訪問圏内であれば、直接訪問による催促も検討してみましょう。
法的手段を取る
未収売掛金の回収における最終手段には、法的手段を取るという方法があります。
法的手段には、「支払督促の申立」「民事調停の申立」「訴訟の提起」「強制執行の申立」の4種類があります。
支払督促の申立は、正式な裁判手続を経ずに、判決などと同様に裁判所から債務者に対して金銭などの支払を命じる支払督促を送付してもらえる制度です。
債務者への送達後2週間以内に異議がなければ、30日以内に債権者の申立により仮執行宣言が付されます。
ただし、異議の申立があった場合は訴訟に移行します。
民事調停の申立は、簡易裁判所で当事者同士の話し合いによって解決する方法です。
当事者間の任意の話し合いのため、交渉が成立するとは限りませんが、合意に至ることで調停調書が作られます。
訴訟の提起は、判決によって判決を得る制度です。
未収売掛金は債権が確定しているのにも関わらず、なぜ訴訟をするのかというと、訴訟による判決を得ることで強制執行手続きを行うことができるためです。
強制執行の申立は、訴訟における確定判決などを債務名義として、地方裁判所で執行文の付与をしてもらい手続きを行います。
強制執行の申立については、法律上厳格な規定があるため一人で進めるには、手続きが難しくトラブルとなる恐れがあります。
従って、強制執行の申立については、必要に応じて弁護士などの専門家への依頼を検討するようにしましょう。
未収売掛金回収のポイント
ここでは、未収売掛金回収のポイントについて解説します。
初動が重要
未収売掛金の発生時には、回収に向けた初動が重要となります。
未収となっている売掛金が発生した際には、すぐに支払いの催促をするようにしましょう。
滞納している債務者にとって、早く支払わなければという意思は時間の経過とともに薄れるため、催促が遅れることにより支払に応じることが億劫と感じてしまうケースがあります。
支払の催促を遅らせることには何一つメリットがありませんので、迅速な対応を心がけましょう。
未収売掛金の発生時に行うべきこと
未収売掛金の発生時に行うべきことは、支払遅延の原因にとって異なります。単純に期日を忘れているケースでは、電話で一報を入れるだけで早期解決が可能です。
一方、支払うことができないケースでは、支払うことができない原因や、いつまでなら支払えるのかを確認しましょう。
物理的に回収が見込めないような場合であれば、法的手段に基づく回収手続きが必要となります。
また、最初から悪意によって支払う意思がないケースでは、前述した売掛金回収の流れに基づき催促を行いましょう。
複数の方法で催促したにも関わらず回収が見込めない場合、法的手段による回収手続きを進めましょう。
未収売掛金の回収には時効がある
未収売掛金の回収には時効が存在します。売掛金の時効期間は、2020年4月以降に発生した売掛金については民法第166条により「売掛金の支払期限から数えて5年」、2020年3月以前に発生した売掛金については「売掛金の支払期限から数えて2年」とされています。
時効が成立すると売掛金は消滅してしまいますが、請求や差し押さえ、債務の承認などの手続きによって時効を中断させることが可能です。
このため、未収売掛金を放置し催促を行うことは、時効の援用により債権が消滅してしまうリスクがあるため、迅速な対応を取るように注意しましょう。
未収売掛金の回収できないことによるリスク
未収売掛金の回収できないことによるリスクには、回収不能により金銭的損失はもちろんですが、「あの会社は債権管理が甘い」「少額の売掛金ならば踏み倒せる」と思われ、取引先からの支払遅延が増加してしまうリスクがあります。
これにより、他の取引先からの信用を失ってしまったり、売掛金回収が長期化することにより自社の資金繰りがショートしてしまったりする可能性があります。
また、銀行や投資家などの外部機関からも、金銭的な管理能力の低い会社だと判断されたり、経営者の資質が不足しており成長性の低い会社だと判断されたりする恐れがあります。
未収売掛金の回収を弁護士に依頼する場合
ここでは、未収売掛金の回収を弁護士に依頼する場合について、メリット・デメリットや費用の相場について解説していきます。
弁護士へ未収売掛金の回収を依頼することは、自社によってプラスとなる場合もあれば、マイナスとなる場合もあります。
自社の状況を総合的に勘案して依頼の要否を検討しましょう。
弁護士に未収売掛金の回収を依頼した場合のメリット
弁護士に未収売掛金の回収を依頼した場合のメリットには、回収にかかる労力と時間を節約出来るという点があります。
当事者間だけでの話し合いの場合、交渉がまとまらず時間だけが過ぎていく可能性があります。
交渉に応じない相手に対しては、裁判所の判決による手続きを速やかに進めることで、迅速な解決が可能になります。
また、専門家の介入により債務者に対してもインパクトを与えることができます。
弁護士に未収売掛金の回収を依頼した場合のデメリット
弁護士に未収売掛金の回収を依頼した場合のデメリットには、一定の費用が必要になるという点が挙げられます。
債権回収を弁護士へ依頼する際には、着手金と成功報酬が発生します。
未収売掛金の金額が小さい場合、弁護士費用の方が多くかかってしまう可能性もあります。
また、裁判による解決という選択肢を取ることで、以降の相手と良好な関係を維持することが困難になる場合もあります。
未収売掛金の回収を弁護士に依頼した場合の費用相場
未収売掛金の回収を弁護士に依頼した場合の費用相場については、内容証明郵便による交渉だけでも、最低5万円程度の着手金がかかります。
また、裁判所による判決を得る手続きを取る場合、10万円程度の着手金が発生するのが一般的です。
また、未収売掛金の回収が成功した際には、成功報酬として回収金額の約20~30%を着手金とは別に支払う必要があります。
まとめ
本記事では、売掛金が未入金だった際の回収方法について、手順やリスクを防ぐ方法を含めて解説しました。
未収売掛金の発生時には、回収に向けた初動が重要となります。
未収売掛金を放置し催促を行うことは、時効の援用により債権が消滅してしまうリスクがあるため、迅速な対応を取るように注意しましょう。
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