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短期借入金と長期借入金の意味・両者の違いまで銀行員が徹底解説

短期借入金と長期借入金

事業資金融資の短期借入金とは?長期借入金とは?

なにが短いの?どこが長いの?

知っているようで、意外とわからない事業資金融資の短期借入金と長期借入金。

今回は融資を審査する銀行員が、それぞれの意味から両者の違いまでわかりやすく説明しますので、事業資金調達の参考にしてください。

執筆者プロフィール

加藤隆二

勤続30年以上、まだまだ現役の銀行員。

融資担当として事業資金調達から、住宅ローン、カードローンなど借入全般に従事。

そのなかで返済が困難な人の相談にも対応してきました。

仕事を通して、数え切れないほどのお客様と会い、相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けません!

この記事を読むとわかること

銀行員が短期借入金と長期借入金について、わかりやすく解説しています。

この記事を読めば、事業資金融資で用いられる短期、長期といった概念や基本事項が理解できます。

短期借入金と長期借入金の基本解説 

短期借入金や長期借入金は日常的に使っている言葉ですが、まずは銀行員視点で少し掘り下げてお話しします。

短期・長期とは融資の返済期間、つまりお金を借りてすぐ返すのか?ゆっくり返済していくのか?という時間の違いです。

短期借入金とは?

短期借入は、その文字通り短期の借入金です。

銀行などの金融機関では、返済期間が1年以内の融資を短期借入と呼んでいます。

特に短い場合は数日から1年までの融資が短期借入金になります。

長期借入金とは?

 短期借入金とは逆に、返済期間が 1年を超える融資が長期借入金です。

短期借入金は1年までと期間が限られていますが、長期借入金にこうした制限は無く、理論的には50年でも100年でも借り入れすることが可能です。

しかしながら、現実的に半世紀もの借入はなく、一般に30年くらいまでとなっています。

融資の種類も短期長期で分けられる

証書貸付や手形貸付など融資の種類(融資商品)も、短期・長期で分けられます。

短期借入金に属する融資

短期借入金で代表的な融資は手形貸付です。

ちなみに、手形割引も短期借入金に含まれるという解釈が一般的です。

手持ちの手形を銀行に持ち込み、期日までの日数に応じた金利を差し引いて(割引の意味)現金するのが手形割引です。

ただし手形割引には「手形買取説」(期日分を手数料として割り引いた額で手形を買い取る、ファクタリングと似たイメージ)の解釈もあります。

そのため他の融資とは違う性質から、一般的な融資とは区別されていますので、この記事では短期借入金には含んでいません。

手形貸付とは?

手形貸付とは、借り入れする金額や返済期日などが記載された約束手形を用いる融資方法が手形貸付です。 

短期借入金はそのほとんどが手形貸付になっています。

長期借入金に属する融資

 長期借入金の代表格は証書貸付です。

証書貸付とは?

証書貸付とは借用金証書’正式には「金銭消費貸借契約証書」)を使った融資です。

胃年を超える長期借入金では、そのほぼすべてが証書貸付になっています。

ちなみに住宅ローンも証書貸付の一種です。

長期間、金利や返済回数などの条件が記載された証書を使い融資する証書貸付では、事業資金融資も住宅ローンも同じ融資種類に属します。

当座貸越とは?

 当座貸越とは、最初に一定の融資限度枠(極度額とも)を決めて、その範囲内で自由に借入と返済ができる融資種類です。(ちなみに個人が使うカードローンも当座貸越の一種です)

当座貸越の契約期間は2年〜5年の自動更新が多いことから、格付(銀行格付、信用格付)では長期借入金に分類されます。当座貸越やカードローンは必要な時に必要な金額を借りて、また返済しての繰り返しなので短期借入金のイメージもあります。

しかし現実は、一度利用するとそのまま使い続けて返済しないことも多く、長期借入金に分類されるのも自然だと考えられているのです。

短期借入金と長期借入金~資金使途の違い

短期借入金と長期借入金は、融資を受けたお金をなにに使うか、その資金使途によっても分けられます。

短期借入金の資金使途

短期借入金で代表的な資金使途は運転資金で、特に良く利用されるのが経常運転資金(売上回収まで不足する運転資金の調達)です。

ほかにも

  • 季節資金
    魚介類やお茶など、入手できる時期が限定される仕入資金など
  • 決算資金
    企業が決算後に税金支払などで必要な資金
  • 賞与資金
    ボーナスを支給するための資金調達
    などが短期借入金の資金使途としてあげられます。

長期借入金の資金使途

長期借入金の資金使途としては、設備資金が主流です。

たとえば工場の新築や、新しい生産ラインや機械の購入などの設備投資は、運転資金と違って、短期の売上で返済できるものではありません。

そして従業員の福利厚生(社員用の託児所など)のように、売上や利益に直結するものばかりではないため、企業の利益から長期に返済していくのが一般的だからです。

また、運転資金も長期返済で資金調達する場合があります。

たとえば仕入代金を支払う経常運転資金でも、借りて返してと繰り返しになる場合なら、あらかじめまとまった金額で運転資金として資金調達して使う場合もあります。

これらは長期運転資金(手許資金、財務安定資金などとも)と呼ばれ、長期借入金でもよく利用されています。

まとめ

記事の結論

短期借入金と長期借入金は、それぞれの資金使途に応じ、自社にあった目的で利用するものですが、銀行との付き合いで柔軟な対応をすることも大事です。

たとえば

  • 自社の想定では半年で返済できるのに、銀行から1年借りて欲しいと言われた
  • 1年の運転資金を申し込んだのに、10年分割で長期返済をすすめられた

こうしたケースでは、融資実績を積み上げたい銀行の意向が強いものです。

短期、長期借入金の上手な使い分けと同時に、銀行との上手な付き合い方も考えながら、融資の選択をしていきましょう。