減価償却費は、経営者や個人事業主の方にとって、必ず知っておきたい会計知識の一つです。
決算や財務分析において非常な重要な項目となりますが、計上にあたっては細かなルールが多く難しく感じてしまうかたも少なくないでしょう。
本記事では、減価償却の概要から定額法と定率法の違いや計算方法について詳しく解説します。経営者や個人事業主の方は、会計処理を行う上で参考にしてみてください。
目次
減価償却とは
減価償却とは、固定資産の購入金額について全額を当期の費用とせず、使用可能期間に応じて将来にわたり分割して費用計上する会計処理をいいます。
建物・機械装置・車両・備品などのように、時間の経過に応じて価値が減少する資産を「減価償却資産」といいます。減価償却資産は、基本的には一度に経費として計上することはできず、使用可能期間に応じて将来にわたって分割計上する必要があります。
減価償却できる資産とできない資産
減価償却は、すべての資産が対象となるわけではありません。減価償却できる資産と、減価償却できない資産があります。ここでは、それぞれの資産について確認していきましょう。
減価償却できる資産
減価償却できる資産は、業務に使用し、かつ時間の経過とともに資産価値が減少する固定資産が対象となります。また、取得価額が10万円以上で使用可能期間が1年以上である固定資産が対象です。
有形固定資産と呼ばれる建物や建物設備などの形のある資産のほか、無形固定資産と呼ばれるソフトウェアや特許権などの形のない資産も対象になります。その他、牛や豚などの家畜や、リンゴやミカンなどの樹木も減価償却の対象です。下表に一覧をまとめます。
減価償却できる有形固定資産 | 建物、建物設備、車両、備品など |
減価償却できる無形固定資産 | ソフトウェア、特許権、意匠権、商標権など |
生物 | 家畜、樹木など |
減価償却できない資産
減価償却できない資産は、「価値が減少しない資産」「建設中の資産」「棚卸資産」などがあります。以下で、それぞれについて説明していきます。
価値が減少しない資産
土地や借地権、美術品・骨董品などは、景気動向に伴う価格の変動はあっても、時間の経過により資産価値が減少することはないと考えられており、減価償却の対象とはなりません。
建設中の資産
建設中の資産は、完成前に建設のために支払った代金は、建設仮勘定として固定資産に計上されますが、減価償却費の対象とはなりません。建物が完成し、使用を開始してから減価償却が可能となります。
棚卸資産
棚卸資産は、商品・原材料・仕掛品・製品などの在庫全般を指します。棚卸資産は、商品や製品を販売したときに、売上原価として売上に対応させて費用計上するため、減価償却はできません。
減価償却費の仕訳方法
減価償却の仕訳方法には、「直接法」と「間接法」の2種類があります。それぞれについて解説します。
直接法
直接法は、減価償却費を固定資産の金額から直接差し引く仕訳方法です。
現在の固定資産の価値が一目で分かるというメリットがあります。例えば、取得価額1,000,000」円の機械装置を期首に取得し、5年の耐用年数にて定額法で処理した場合、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
減価償却費 | 200,000円 | 機械装置 | 200,000円 |
間接法
間接法は、減価償却費を固定資産の金額から直接差し引くのではなく、減価償却累計額という科目で計上する方法です。固定資産の取得価額と、これまでの償却額の類型が一目で分かるというメリットがあります。
例えば、取得価額1,000,000」円の機械装置を期首に取得し、5年の耐用年数にて定額法で処理した場合、仕訳は以下のようになります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
減価償却費 | 200,000円 | 減価償却累計額 | 200,000円 |
減価償却費の計算方法
減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類があります。それぞれについて解説します。
定額法
定額法は、毎期一定額を減価償却していく方法です。取得価額に定額法による償却率を乗じた金額が1年間の減価償却額となります。定率法に比べて、帳簿がシンプルになり資金計画が立てやすいというメリットがあります。
定率法
定率法は、毎年一定の割合ずつ減価償却していく方法です。基本的には、取得価額から前年までの償却累計額を控除した金額に、定率法による償却率を乗じた金額が1年間の減価償却額となります。定額法に比べて、初年度の減価償却費が大きく、早期に資産を償却することにより費用を回収できるというメリットがあります。
減価償却の注意点
減価償却の会計処理を行う際に、事前に確認しておくべき注意点がいくつかあります。ここでは、それぞれの注意点について説明します。
耐用年数は資産ごとに異なる
固定資産の耐用年数は、その種類ごとに細かく定められています。会計処理の際には、それぞれの固定資産に対応した耐用年数を使用して、費用の計上や仕訳を行っていくことになります。
中古の固定資産の取扱い
中古の固定資産を取得した場合、取得価額の決め方には違いはありません。しかし、耐用年数の決め方は、新品を購入した場合と異なります。中古の固定資産は、それまで他の人に使われてきた資産であるため、既に資産としての価値が減っており、残存耐用年数も当然短くなります。そのため、中古の固定資産は新品に比べて、早い年数で経費を計上することになります。
中小企業法人には特例がある
中小企業法人には、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」があります。30万円未満の減価償却資産を購入した場合、300万円の合計額を上限に、全額を当期の費用として計上できるという特例です。青色申告法人である中小企業者又は農業協同組合等が対象となります。
まとめ
本記事では、減価償却の概要から定額法と定率法の違いや計算方法について解説しました。減価償却には様々なルールがありますが、基本を理解していれば特別に難しい処理はありません。ひとつひとつの仕訳を理解すれば、正確な仕訳ができるようになります。また、会計上の処理に困った際には、自社だけで判断するのではなく、税理士などの専門家のサポートも活用しましょう。