スタートアップの資金調達には、ベンチャーキャピタルやクラウドファンディングの活用、エンジェル投資家から出資を受けるといった方法があります。
スタートアップの資金調達は事業拡大を目的としたものが大半ですが、資金調達の前後においては思わぬ失敗が待ち受けているケースもあります。
本記事では、スタートアップが資金調達に失敗する理由とその後の事例について解説します。
これから起業を検討している方や、資金調達を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
スタートアップが資金調達に失敗する理由
ここでは、スタートアップが資金調達に失敗する理由について解説します。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達における失敗は、契約内容によっては取り返しのつかない事態となる可能性もあるため細心の注意を払いましょう。
自社の株式を放出しすぎてしまった
スタートアップが資金調達に失敗する理由には、自社の株式を放出しすぎてしまうケースがあります。
特定の投資家が自社の株式の大多数を保有する状態になった場合、代表者の持分比率が低下し雇われ社長状態に陥る可能性もあります。
経営者の持株比率が少ない場合、投資を敬遠するベンチャーキャピタルもいるため、その後に資金調達においても影響を及ぼします。
このようなケースは、金融知識や事業経験がと少ない場合に陥りやすいため、自身で勉強することはもちろん、専門家へ相談するなどしてアドバイスを受けるようにしましょう。
投資契約書の内容を理解していなかった
スタートアップが資金調達に失敗する理由には、投資契約書の内容を理解していなかったケースがあります。
投資契約書の内容によっては、意思決定の自由度やスピードを低下させるような条項が記載されている場合があります。
スタートアップにおいては、内外の経営環境が目まぐるしく変化する傾向にあるため、企業として生き残るためには迅速な意思決定が不可欠です。
投資契約書の締結時には契約内容をしっかりと確認し、専門家のアドバイスによるリスク検証を行いましょう。
投資家のファンド償還期限が到来してしまった
スタートアップが資金調達に失敗する理由には、投資家のファンド償還期限が到来し、資金を回収されてしまうケースがあります。
ベンチャーキャピタルなどが運営するファンドは、金融機関などの機関投資家や個人投資家から集めた資金を投資し、満期時に利益を上乗せして資金を返す仕組みです。
そのため、償還期限の到来時には元本と利益を出資元の金融機関などに返す必要があり、ファンドを運営するベンチャーキャピタルは保有株式を現金化しようとします。
ベンチャーキャピタルからの資金調達を検討する際には、ファンドの償還期限までにIPOやM&Aなどによるエグジットの実現を求められている点に注意しましょう。
金融商品取引法に抵触してしまった
スタートアップが資金調達に失敗する理由には、金融商品取引法に抵触してしまうケースがあります。
金融商品取引法では、広く資金調達を募集する場合、有価証券届出書や通知書を財務局に提出する必要があると定めています。
これらを知らずに違反してしまった場合、金融商品取引法違反となってしまうリスクがあります。このような事態を避けるためには、募集行為にならない私募形式により、ベンチャーキャピタルなどのプロの投資家向けを対象に資金調達を行いましょう。
資金調達後に失敗する理由
ここでは、資金調達後に失敗する理由について解説します。資金調達後においても、事業拡大のための経営判断を誤ることで調達資金を無駄にしてしまう可能性があります。
過度な人材採用による人件費増
資金調達後に失敗する理由には、過度な人材採用による人件費増があります。
事業拡大期において、必要となる人材の確保は優先度の高い課題です。
しかし、人材採用は経営状況に応じて適性に行わなければ、売上の成長以上に人件費が増加し業績を圧迫する可能性があります。
人材の増加は売上の成長とは必ずしも直結しないため、状況に応じた採用戦略をとるようにしましょう。
過度な採用費用による収益圧迫
資金調達後に失敗する理由には、過度な採用費用による収益圧迫があります。
人材紹介サービスに対して投資を行うだけでは、必ずしも自社が求める人材の獲得に繋がるわけではありません。
自社のビジョンやミッションを言語化し、評価軸を作ることで求める人材像を具体的にすることが重要となってきます。
広告費の投資額やタイミングを誤る
資金調達後に失敗する理由には、広告費の投資額やタイミングを誤るケースがあります。
自社製品のプロモーションを目的に広告投資を行っても、プロダクトやサービスの作り込みが足りない段階ではユーザー数や売上の増加にはつながりません。
また、広告投資の実行に際しては費用対効果を事前に検証し、適切な投資額となるように注意しましょう。
安易な固定費の増加
資金調達後に失敗する理由には、安易な固定費の増加があります。
オフィスの移転等の固定費の増加となる意思決定をする際には、緊急度と重要度をしっかりと検討して行いましょう。
先輩の起業家や投資家へ相談するなどして、人件費や固定費に対する相場観を身に付けましょう。
フェーズ別・失敗を回避するための注意点
ここでは、フェーズ別・失敗を回避するための注意点について解説します。
事業計画から立ち上げまでの段階と事業拡大段階では、失敗を回避するための注意点が異なります。
それぞれの段階において、どのような点に注意すべきか具体的に説明していきます。
事業計画から立ち上げ段階の注意点
事業計画から立ち上げ段階の注意点には、人材採用の戦略を慎重に検討することが挙げられます。
事業計画から立上げ段階においては人材が不足する傾向にあるため、人材を確保するために必要以上に好待遇で採用してしまうことがあります。
これは後々において、能力不足や方針の不一致等の問題が発生する恐れがあります。
人材採用においては、保有するスキルや適性、人間性などをしっかり見極めて採用を進めていきましょう。
また、資金面では事業計画書をしっかり作成し、今後の収支計画を踏まえた資金調達と投資戦略を実行するようにしましょう。
事業拡大段階の注意点
事業拡大段階の注意点には、現状の問題や課題を適切に把握し、改善策を早期に実行することが挙げられます。
事業拡大段階では、急成長に対して人材の確保や育成が追い付かない問題や、事業の拡大を支える運営体制が確立できていないといった問題が発生する恐れがあります。
このような問題を回避するため、PDCAサイクルを短いスパンで回し、人材不足や運営体制を補うために、設備やシステムを導入する等の改善策を機動的に検討・実行するようにしましょう。
また、従業員の増加に応じて組織体制の変更を検討する必要もあります。があります。
具体的には、自社のミッション・ビジョン・バリュー・戦略・戦術の概念を社内で共有し、それに応じた人事評価制度を構築することで、権限移譲を含めた中間層の育成を推し進めていくこと等が有効です。
スタートアップの失敗事例
ここでは、スタートアップの失敗事例について、海外のスタートアップ企業の実例を紹介していきます。
HOMEJOY
HOMEJOYは、掃除をしてほしい人とホームクリーナーをマッチングさせるサービスを提供する企業です。
HOMEJOYが失敗した原因には、顧客がホームクリーナーに対してプラットフォーム外で直接仕事を依頼する事態に対処しきれなかった点があります。
また、仲介手数料を25%に設定した結果、質の低いホームクリーナーを呼び寄せ、ユーザーが臨むクオリティとは合致しないサービスなってしまった点があります。
類似サービスを提供する競合も多く、HOMEJOYのサービスに満足できなかったユーザーが他サービスに流入する結果となりました。
TILT
TILTは、P2Pの送金サービスを提供する企業です。
TILTが失敗した原因には、創業者が醸成した組織内の体育会系文化が、従業員の事業に対する反対意見や懸念などを抑圧してしまった点があります。
また、ツールの開発のような長期的に収益の見込めるプロジェクトに集中せずに、短期的なマーケティングに莫大な資金を投じてしまった点が挙げられます。
その結果、VenmoやGofundmeのような、より専門的な競合企業と比較して明確な顧客価値の提案が不足することになりました。
ARGYLE
ARGYLEは、BtoBマーケティングを支援するソーシャルメディアツールの提供する企業です。
ARGYLEが失敗した原因には、AdobeやHootSuiteなどの大手競合他者との競争力不足が挙げられます。
また、大手SNSの定期的なAPI仕様の変更に対応するリソースが不足していた点もあります。
これは、資金の問題から必要な人的リソースを揃えられなかったのが、細大の要因と言えるでしょう。
OPTIER
OPTIERは、企業向けに顧客との取引をモニタリング・分析するクラウドソフトを提供する企業です。
OPTIERが失敗した原因には、十分な市場シェアを確保することができなかった点が挙げられます。
これは、スマートフォンの普及に伴いモバイルベースのアプリが増加し、顧客のトレンドを様々なチャネルから収集しなければいけなかったが、その対応に遅れたことが大きな要因です。
また、モニタリングサービスを顧客に提供するのに数ヶ月かけていたが、同じようなサービスを数時間で提供することができる会社が出現した点も原因の一つです。
まとめ
本記事では、スタートアップが資金調達に失敗する理由とその後の事例について解説しました。
スタートアップの資金調達は、契約内容によっては取り返しのつかない事態となる可能性もあります。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの資金調達を行うためには細心の注意を払いましょう。
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