個人事業主の方で売上や利益の金額が一定規模を超えた場合、法人設立を検討することがあるかと思います。
法人の形態には「株式会社」「有限会社」「合同会社」など、さまざまな種類があります。
法人設立の際には、事業内容や売上規模などに応じて自社に最適な法人の形態を選択するとよいでしょう。
本記事では、株式会社・有限会社・合同会社の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
これから法人設立を検討している方や、法人形態の種類について知っておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
株式会社と有限会社と合同会社の違い
ここでは、株式会社・有限会社・合同会社の違いについて解説していきます。
法人の形態には様々な種類がありますが、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
法人設立の際には、それぞれの形態を比較検討し、自社にとって最適な法人形態を選択しましょう。
株式会社とは
株式会社とは、株式の発行により資金を調達し設立される法人形態です。
法人の中でも代表的な形態であると言えます。会社経営の源泉となる資本の所有者と、会社の経営を行う人が分離しており、資本金を提供した人が株主となります。
また、経営者は株主総会によって選出されます。
出資者と経営者が異なるケースを「所有と経営の分離」と呼び、株式会社の大きな特徴の一つです。
有限会社とは
有限会社とは、過去に設立が認められていた会社形態の1つです。
2006年5月1日の会社法施行に伴い、根拠法である有限会社法が廃止され有限会社の新設はできなくなりました。
新会社法の施行以降、有限会社は特例有限会社として株式会社に準じて存続し、従来の有限会社に類似した経過措置・特則が適用されています。
株式会社と比較して、株式の公開ができない、資本金の額が300万円以上必要、決算の公開義務がない、などの違いがあります。
合同会社とは
合同会社とは、2006年5月1日施行の会社法により新設された会社形態です。
アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとしています。所有と経営の分離により、出資者と経営者が異なるケースが多い株式会社に対して、合同会社は出資者が会社の経営者となり、出資したすべての社員に会社の決定権がある点が特徴です。
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社の違いは下表のとおりです。所有と経営の分離の他にもさまざまな違いがあるため、各項目をよく確認して比較検討しましょう。
株式会社 |
合同会社 |
|
意思決定 |
株主総会 |
総社員の同意 |
所有と経営 |
原則完全分離 |
原則同一 |
出資者責任 |
間接有限責任 |
間接有限責任 |
役員の任期 |
最長10年 |
任期なし |
代表者の名称 |
代表取締役 |
代表社員 |
決算公告 |
必要 |
不要 |
定款 |
認証必要 |
認証不要 |
利益配分 |
出資比率に応じる |
定款で自由に規定 |
設立費用 |
約200,000円〜 |
約100,000円〜 |
株式会社のメリット
ここでは、株式会社のメリットについて紹介していきます。
株式会社のメリットには、知名度が高いことや株式による資金調達が可能な点があります。
合同会社と比較して知名度が高い
株式会社のメリットには、合同会社よりも知名度が高いという点があります。
外資系企業などでは合同会社を選択しているケースもありますが、大手企業や有名企業の法人形態は株式会社を選択しているケースが圧倒的に多いです。
株式会社の知名度の高さから、一定の信用を得られるという点は大きなメリットです。
株式の発行による資金調達が可能
株式会社のメリットには、株式の発行による資金調達が可能という点があります。
出資する株主にとっては、出資額以上の責任を負わない間接有限責任となるため、出資額以上のリスクを負わず投資しやすいというメリットがあります。
株式会社のデメリット
ここでは、株式会社のデメリットについて紹介していきます。
株式会社のデメリットには、利益配分は出資額に応じて決定しなければならい点や、設立にかかる費用や手続きが多く決算公告の義務がある点などが挙げられます。
利益配分が自由に決められない
株式会社のデメリットには、利益配分が自由に決められないという点があります。
株主会社の利益配分は、株主の出資額に応じて配分する必要があります。
そのため、出資額は少ないが会社への貢献度の高いなどの理由がある場合でも、特定の出資者への利益配分を増額することはできません。
一方、合同会社であれば利益配分の基準を自由に定めることができます。
設立にかかる費用や手続きが多い
株式会社のデメリットには、設立にかかる費用や手続きが多いという点があります。
法務局への登記申請時に納める登録免許税を例に挙げると、合同会社では資本金額の0.7%によって計算され最低金額が6万円であるのに対して、株式会社では資本金額の0.7%で計算される点は同様ですが、最低金額は15万円となっています。
また、株式会社は公証役場で定款の認証してもらう必要があり、認証手数料は資本金額に応じて3万~5万円となっています。一方、合同会社では定款の認証が不要となっています。
決算公告の義務がある
株式会社のデメリットには、決算公告の義務があるという点があります。
決算公告とは、会社の経営成績や財務状況を利害関係者に対して明らかにし、取引の安全性を保つために行われます。決算公告は官報に掲載することが一般的ですが、掲載料が7万円程度発生します。
また、電子公告の方法による場合でも、1万円程度の費用が発生します。一方、合同会社には決算公告の義務はありません。
合同会社のメリット
ここでは、合同会社のメリットについて紹介していきます。合同会社のメリットには、設立費用が抑えられる点や、利益配分を自由に決められる点などがあります。
設立費用が抑えられる
合同会社のメリットには、設立費用が抑えられるという点があります。
法人設立時には、法務局へ登記申請をする必要があります。
登記申請時に納付すべき登録面鏡税の金額は、株式会社が15万円程度かかるのに対して、合同会社では6万円程度です。
また、株式会社の場合、定款の認証を公証役場で受ける必要があり、3万~5万円の費用がかかります。一方、合同会社の場合、定款の認証が不要のため認証費用も発生しません。
スピーディーな意思決定が可能
合同会社のメリットには、スピーディーな意思決定が可能という点があります。
株式会社の場合、会社の方針や重要事項の決定には株主総会による決議が必要です。
一方、合同会社の場合、所有と経営が一致により出資者が経営者となるため、スピーディーな意思決定が可能です。
また、合同会社では、不特定多数の第三者からの出資を想定していないため、会社経営に第三者が介入せず、経営の自由度が高くなるというメリットがあります。
決算公告の義務がない
合同会社のメリットには、決算公告の義務がないという点があります。株式会社の場合、取引の安全性を保つため、決算公告により会社の経営成績や財務状況を利害関係者へ明らかにする必要があります。
決算公告は官報へ掲載することが一般的ですが、7万円程度の費用が必要であり、電子公告の方法による場合でも1万円程度の費用が発生します。
一方、合同会社の場合、決算公告の義務がないため官報掲載に必要な費用や手続きが発生しません。
役員の任期がない
合同会社のメリットには、役員の任期がないという点があります。
株式会社の場合、役員の任期は通常2年と定められています。
一方、合同会社の場合、役員の任期は無制限であるため、役員の任期満了時に発生する重任登記に係る登録免許税なども不要となります。
利益配分が自由に決められる
合同会社のメリットには、利益配分が自由に決められるという点があります。
株式会社の場合、利益配分は配当という形で出資者の出資比率に応じて分配されます。
利益配分の方法は自由に定めることができません。
一方、合同会社の場合、利益配分の方法について、出資比率に関わらず自由に決めることができます。
出資額の大小だけではなく、会社への貢献度などの観点から利益配分を決定できるのは、合同会社の大きな特徴と言えます。
合同会社のデメリット
ここでは、合同会社のデメリットについて紹介していきます。
合同会社のデメリットには、株式会社よりも知名度が低い点や、資金調達の方法が限られる点などがあります。
株式会社よりも知名度が低い
合同会社のデメリットには、株式会社よりも知名度が低いという点があります。
日本においては、法人と言えば株式会社のイメージが強いです。
合同会社の数は増えてきてはいますが、株式会社以外の会社形態について正しく理解している方は多くありません。
そのため、合同会社という会社形態の知名度の低さから、取引先あら誤った先入観を持たれてしまう場合があります。
出資者の対立時は意思決定が困難になる
合同会社のデメリットには、出資者の対立時は意思決定が困難になるという点があります。
合同会社の場合、出資者と経営者がイコールの関係のため、すべての出資者が対等の決定権を持ちます。
そのため、経営における迅速な意思決定が可能というメリットがある一方で、出資者同士の対立時には、決定権が対等であるがために意見の収拾がつかず、会社運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
資金調達の方法が限られる
合同会社のデメリットには、資金調達の方法が限られるという点があります。
合同会社では、株式による資金調達は困難です。金融機関からの融資による借入れや、国や自治体の補助金・助成金による資金調達が主となります。
そのため、株式会社と比較した場合、資金調達の方法が限定されます。
まとめ
本記事では、株式会社・有限会社・合同会社の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
株式会社と合同会社には、さまざまな違いやメリット・デメリットがあります。
自社の状況によって最適な会社形態は異なるため、事業内容・事業規模・資金調達などの観点から比較検討するようにしましょう。
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