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会社の節税対策<企業型確定拠出年金> メリット・デメリット

企業型確定拠出年金は、会社が掛金を拠出して従業員が運用することで、60歳以降に受給可能となる退職金制度です。

個人型確定拠出年金であるiDecoと同様に、運用時は掛金が社会保険料控除の対象となります。

また、受給時は一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。

そのため、会社と従業員の双方において節税対策にもなるというメリットがあります。

本記事では、企業型確定拠出年金について、概要やメリット・デメリットについて解説します。

人事担当や経理担当として退職金業務を担当している方や、退職金制度の設計を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

企業型確定拠出年金とは

ここでは、企業型確定拠出年金の概要について解説していきます。

企業型確定拠出年金は、2001年に日本版401kとしてアメリカの制度を参考にして導入されました。

退職金制度が十分に準備されていない中小企業にとっても、少ない負担で効果的に退職金を準備できる制度となっています。

企業型確定拠出年金の仕組み

企業型確定拠出年金の仕組みは、企業が掛金を拠出し従業員が運用を行い、掛金と運用益を退職後に受け取ります。

企業型確定拠出年金は、給付額ではなく拠出額が確定している制度であるため、退職後に受け取る金額は従業員の運用成績によって変動します。

中小企業の退職金制度構築に最適

中小企業の退職金制度は、大企業と比較して十分に整備されていない傾向にあります。

大企業であれば自社の退職金制度や企業年金等ありますが、中小企業では退職金制度そのものが無かったり、十分な金額が支給されなかったりといったケースも多いです。

企業型確定拠出年金の導入により、会社は毎月一定の金額を拠出することで退職金を準備することができ、従業員は拠出金を運用することで老後資金を計画的に準備することが可能となります。

そのため、企業型確定拠出年金の導入は中小企業の退職金制度構築においても最適なのです。

中小企業向けの法改正

2020年10月1日に施行された確定拠出年金法の一部改正により、中小企業においても企業型確定拠出年金を導入しやすい環境が整ってきました。

簡易企業型確定拠出年金では、従業員数が300名以下の企業を対象に、制度設計や役所への提出書類等が簡略化されています。

従業員にとっては、所得税や社会保険料の負担を増やすことなく、会社から掛金の拠出を受けて老後資産を形成することができます。

企業型確定拠出年金の導入には会社によって制度設計等が異なるため、運営管理機関やコンサルタント等、専門家のアドバイスを受けながら検討しましょう。

簡易型と通常の企業型の違いについて下表にまとめます。

項目簡易型通常の企業型
制度の対象者適用対象者を厚生年金被保険者全員に固定
※職種や年齢等によって加入是非の判断は不可
厚生年金被保険者
※職種や年齢等によって加入是非の判断は不可
拠出額定額定額、定率、定額+定率のいずれかを選択
マッチング拠出選択肢は1つでも可2つ以上の額から選択
商品提供数2本以上35本以下3本以上35本以下
従業員規模300人以下人数制限なし

(出所:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html)

企業型確定拠出年金とiDeCoの違い

企業型確定拠出年金とiDeCoの違いには制度の目的が挙げられます。

企業型確定拠出年金が会社による福利厚生制度であるのに対して、iDeCoは加入者による自助努力の制度です。

そのため、企業型確定拠出年金では掛金は会社が負担しますが、iDeCoでは加入者本人が掛金を負担します。

企業型確定拠出年金とiDeCoの違いについて下表にまとめます。

 企業型確定拠出年金iDeCo
実施主体企業型年金規約の承認を受けた事業主国民年金基金連合会
加入対象者実施企業に勤務する従業員
 
※厚生年金保険の被保険者のうち
 厚生年金保険法第2条の5第1項第1号に規定する第1号厚生年金被保険者、
 または同項第4号に規定する第4号厚生年金被保険者。


1.国民年金第1号被保険者(自営業者等)
※農業者年金の被保険者、国民年金の保険料免除者を除く。

2.国民年金第2号被保険者(厚生年金保険の被保険者)
※公務員や私立学校教職員共済制度の加入者を含む。

※企業型確定拠出年金加入者においては、以下の全てにあてはまる場合に限る。
[1]掛金(企業型確定拠出年金・iDeCo)が各月拠出である。
[2]iDeCoの掛金額は、企業型確定拠出年金の事業主掛金額と合算して各月の拠出限度額を超えていない。
[3]企業型確定拠出年金の加入者掛金を拠出していない。

3.国民年金第3号被保険者(専業主婦(夫)等)

4.国民年金任意加入被保険者
 
掛金事業主拠出
(企業型年金規約に定めた場合は加入者も拠出可能(マッチング拠出)。)
加入者拠出
「iDeCo+」(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)を利用する場合は事業主も拠出可能。)
拠出限度額

詳細はこちら
■確定給付型の年金を実施していない場合:55,000円/月

■確定給付型の年金を実施している場合:27,500円/月
※マッチング拠出の限度額は、事業主掛金額を超えず、
かつ、事業主掛金額とマッチング拠出による事業主掛金額の合計が55,000円/月(確定給付型の年金を実施している場合は27,500円/月)の範囲内。


1.国民年金第1号被保険者(自営業者等):68,000円/月
※国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、それらの額を控除した額

2.国民年金第2号被保険者(厚生年金保険の被保険者)
■確定給付型の年金及び企業型確定拠出年金に加入していない場合(公務員を除く):23,000円/月

■企業型確定拠出年金のみに加入している場合:20,000円/月
※企業型確定拠出年金の事業主掛金額との合計額が55,000円の範囲内

■確定給付型の年金のみ、または確定給付型の年金と企業型確定拠出年金の両方に加入している場合:12,000円/月
※企業型確定拠出年金の事業主掛金額との合計額が27,500円の範囲内

■公務員:12,000円/月

3.国民年金第3号被保険者(専業主婦(夫)等):23,000円/月

4.国民年金任意加入被保険者:68,000円/月
※国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、それらの額を控除した額
 

注:確定給付型の年金とは、厚生年金基金、確定給付企業年金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済制度を指します。

(出所:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html)

企業型確定拠出年金のメリット

ここでは、企業型確定拠出年金のメリットについて解説していきます。

企業型確定拠出年金の掛金は、掛金の拠出時において非課税となります。

従業員にとっては、給与所得として扱われないため、掛金に対する所得税や社会保険料の負担がありません

会社が倒産しても退職金が残る

企業型確定拠出年金には、会社が倒産しても退職金が残るというメリットがあります。

中小企業は大企業と比較した場合、経営基盤や財務体質が安定しておらず、経営不振に陥った際には会社が倒産する可能性もあります。

企業型確定拠出年金は、自社における確定給付型の退職金積立とは異なり会社の資産と分離してされているため、倒産後も差し押さえ等の対象となることなく退職金を守ることができます。

また、会社が倒産した場合、企業型確定拠出年金は次の勤務先やiDeCoへ移管することが可能であり、安心して老後資金を築くことができます。

会社と従業員の双方に節税メリットがある

企業型確定拠出年金には、会社と従業員の双方に節税メリットがあります。

従業員にとっては、掛金が給与所得として扱われないため、所得税や社会保険料の負担がありません。

そのため、会社から拠出された掛金を全額積み立てることができます。

また、会社にとっては、毎月拠出する掛金は会計上「福利厚生費」として費用計上できるため、法人税法上は全額損金へ算入することができます。

運用時と給付時の両方で税制上のメリットがある

企業型確定拠出年金には、運用時と給付時の両方で税制上のメリットがあります。

金融商品の運用で利益が発生した場合、通常は運用益に対して20.315%の税金が課されます。

しかし、企業型確定拠出年金における運用収益は非課税となるため、運用益を含めた金額を積み立てることが可能です。

また、受け取り時には所得控除の適用により、一定金額までは非課税として取り扱われます。企業型確定拠出年金を一時金で受け取った場合、退職所得として退職所得控除が適用されます。

一方、年金として受け取った場合、雑所得として公的年金等控除が適用されます。

マッチング搬出でさらに節税できる

企業型確定拠出年金には、マッチング拠出でさらに節税できるメリットがあります。

マッチング拠出とは、従業員自身が掛金を上積みできる仕組みです。支払った掛金の全額が所得税における小規模企業共済等掛金控除の対象となります。

会社に補填責任が無い

企業型確定拠出年金には、会社に補填責任が無いというメリットがあります。

企業型確定拠出年金は、掛金の拠出額は決まっていますが、確定給付企業年金とは異なり給付額は決まっていません。

企業型確定拠出年金の給付額は、あくまでも従業員本人の運用成績によって変動します。

そのため、個々の運用成績に対して責任を負わず、会社は損失が生じた場合であっても補填する必要がありません。

また、将来の給付額が確定しているものではないため、自社の退職金制度等で見られる積立不足も発生しません。

企業型確定拠出年金のデメリット

ここでは、企業型確定拠出年金のデメリットについて解説していきます。

企業型確定拠出年金には、原則として60歳まで受け取ることができない点や、事務手続きが必要となる点など、いくつかのデメリットも存在します。

払出・解約は60歳までできない

企業型確定拠出年金には、払出・解約は60歳までできないというデメリットがあります。

企業型確定拠出年金は、原則として60歳まで受け取ることができず、原則60歳以降に本人が請求手続きをすることで受給可能となります。

受給時は本人の選択により、一時金または年金の形で受け取ることができます

事務手続きが必要

企業型確定拠出年金には、事務手続きが必要というデメリットがあります。

自社で企業型確定拠出年金を導入した場合、制度運用のための事務手続きを継続的に行う必要があります。

従業員の入退社時の加入脱退手続きや、従業員情報の変更時や掛金拠出の際の事務手続きが必要です。

導入後は継続的に事務コストがかかる点を理解しておきましょう。

まとめ

本記事では、企業型確定拠出年金について、概要やメリット・デメリットについて解説しました。

企業型確定拠出年金は、会社と従業員の双方に節税メリットがあります。

従業員にとっては、掛金が給与所得として扱われないため、所得税や社会保険料の負担がありません。

また、会社にとっては、毎月拠出する掛金を全額損金へ算入することができます。

企業型確定拠出年金は退職金制度が十分に準備されていない中小企業にとっても、少ない負担で効果的に退職金を準備できる優れた制度となっています。

「資金の先生」では資金調達や税金に関する無料見積もりを行っています。

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人事担当や経理担当として退職金業務を担当している方や、退職金制度の設計を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。

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