目次
はじめに
企業経営において、十分な資金の確保は事業の存続と発展に欠かせない要素です。創業期から成長期、そして安定期に至るまで、各段階で適切な資金調達方法を選択することが求められます。本記事では、法人が利用できる様々な資金調達手段について、その特徴やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。ぜひ参考にしていただき、自社に最適な資金調達戦略を見出してください。
主な資金調達方法
法人が利用できる資金調達方法は、大きく分けて「負債による調達」「資本による調達」「資産の活用」の3つに分類されます。それぞれの特徴を理解した上で、自社の状況に合わせて最適な手段を組み合わせることが重要です。
負債による調達
負債による資金調達とは、借入金や社債の発行などにより、外部から資金を調達する方法です。主な手段としては、金融機関からの融資、社債の発行、ファクタリングなどがあげられます。
金融機関からの融資は、比較的手続きが簡単で、多額の資金を調達できるメリットがあります。一方で、返済義務が発生するため、事業計画を綿密に立てる必要があります。社債の発行は、大企業を中心に利用されている手段で、発行条件を自由に設定できるのが特徴です。ただし、発行コストがかかる点にはご注意を。ファクタリングは、売掛金を現金化する手段として注目されています。短期的な資金繰りに有効ですが、手数料がかかるデメリットもあります。
資本による調達
資本による資金調達とは、増資や出資などにより、企業の資本を拡充する方法です。主な手段としては、株式の公募増資、ベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディングなどがあげられます。
株式の公募増資は、上場企業が一般投資家から資金を調達する代表的な方法です。一方で、新株発行により既存株主の持ち分が希薄化するデメリットがあります。ベンチャーキャピタルからの出資は、ベンチャー企業の成長を後押しする重要な役割を果たしています。しかし、経営への関与が強くなる可能性があります。クラウドファンディングは、インターネットを活用して不特定多数の個人から資金を集める新しい手法で、リターンの設定が課題となります。
資産の活用
資産の活用による資金調達とは、保有する資産を現金化することで資金を確保する方法です。主な手段としては、固定資産の売却、M&A、事業の一部売却などがあげられます。
固定資産の売却は、遊休資産を処分することで一時的に資金を確保できます。しかし、事業に必要な資産を失うリスクもあります。M&Aは、企業の買収や合併を行うことで資金を調達する手段です。事業の再編が可能となる一方で、株主の理解を得る必要があります。事業の一部売却は、コア事業以外の部門を切り離すことで資金を捻出する方法です。事業ポートフォリオの見直しにもつながります。
政府系金融機関の制度融資
法人向けの資金調達手段の中でも、政府系金融機関の制度融資は特に注目されています。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などが提供するこれらの制度融資は、低金利かつ長期の返済期間が設定されているのが特徴です。
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫は、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業、国際協力銀行など、さまざまな融資制度を提供しています。中小企業向けの融資メニューが特に充実しており、創業支援や事業継続、経営改善、海外展開など、企業の様々なニーズに対応しています。
例えば、「新規開業資金」は、開業後概ね7年以内の中小企業者を対象に、最大7,200万円までの融資を行う制度です。担保や保証人は原則不要で、実質無利子の特典もあります。また、「経営革新支援資金」は、新製品・新サービスの開発などを支援する融資制度で、研究開発費用や設備投資資金を調達できます。このように、企業の成長段階に合わせた様々な選択肢が用意されています。
商工組合中央金庫の融資制度
商工組合中央金庫は、中小企業者を対象とした融資制度を提供しています。特に、国の政策に基づく制度融資が充実しているのが特徴です。
代表的な制度として、「小口零細企業者設備資金」があげられます。この制度は、従業員20人以下の小規模事業者を対象に、設備資金を低利で融資するものです。上限額は1,000万円までで、運転資金としても利用できます。また、「中小企業振興資金」は、中小企業の経営基盤の強化を目的とした制度融資です。最大8億円までの融資が可能で、幅広い用途に活用できます。これらの制度は、担保や保証が不要であることが多く、中小企業の資金繰りを下支えしています。
創業期の資金調達
企業にとって、創業期の資金調達は極めて重要な課題です。事業の立ち上げに必要な資金を確保し、着実に成長軌道に乗せることが求められます。創業期には、自己資金に加えて、様々な公的支援制度を活用することが有効です。
自己資金の活用
創業時の資金調達では、まず自己資金の活用が重要視されます。自己資金とは、経営者自身の預貯金や資産の売却代金などを指します。審査の際にも、自己資金の投入が企業への本気度を示す材料として評価されがちです。
自己資金を最大限活用することで、外部からの調達額を抑えられるメリットがあります。しかし、調達額に限界があるため、事業の拡大に伴い追加の資金調達が必要になる可能性が高いです。自己資金は、あくまでも創業期の一時的な足がかりとして捉えるべきでしょう。
創業支援制度の活用
創業期の資金調達では、国や自治体が提供する創業支援制度の活用が有効です。日本政策金融公庫の「新規開業資金」をはじめ、各自治体でも創業者向けの低利融資制度が設けられています。
例えば、東京都の「新規創業支援資金」は、都内での開業を支援する融資制度です。最大2,000万円まで借り入れが可能で、実質無利子の特典もあります。また、一定の計画書の提出が必須とされており、事業計画の策定を通じて創業の準備を整えることができます。このように、公的支援制度は、単なる資金調達に留まらず、創業プロセス全体をサポートしてくれます。
クラウドファンディングの活用
近年注目されているのが、クラウドファンディングを通じた資金調達です。インターネット上のプラットフォームを介して、不特定多数の個人から出資を募ることができます。
クラウドファンディングのメリットは、投資家に還元するリターンを自由に設定できる点にあります。金銭的なリターンはもちろん、製品やサービスの提供、イベントへの招待など、柔軟な設計が可能です。一方で、プロジェクトの魅力を的確にアピールし、目標金額を達成する必要があります。創業期の資金調達に向けて、クラウドファンディングの活用は有力な選択肢と言えるでしょう。
既存企業の資金調達
創業後に事業が軌道に乗れば、さらなる成長に向けて追加の資金調達が必要になります。既存企業が利用できる主な資金調達方法には、金融機関からの融資、増資、社債の発行などがあります。
金融機関からの融資
企業が最も一般的に利用する資金調達方法が、金融機関からの融資です。民間銀行や信用金庫などに加え、政府系金融機関の融資制度も幅広く活用されています。
金融機関からの融資のメリットは、比較的簡単に大口の資金を調達できる点にあります。一方で、事業実績や財務内容、担保の有無などによって、融資額や金利、返済期間が大きく変わってきます。企業は、綿密な事業計画を立て、融資審査に臨む必要があります。
融資の種類 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
民間銀行の融資 | 民間金融機関からの融資 | 迅速な資金調達が可能 | 金利が比較的高め |
政府系金融機関の融資 | 日本政策金融公庫など公的機関の融資制度 | 低金利、長期返済が可能 | 審査に時間がかかる |
増資による資金調達
企業が成長を遂げる過程で、増資による資金調達が行われることがあります。株式の公募増資や第三者割当増資などの方法があり、資本の拡充につながります。
増資のメリットは、返済義務がないことです。一方で、新株の発行により既存株主の持ち分が希薄化するデメリットがあります。また、公募増資の場合は、開示資料の作成など、煩雑な手続きが伴います。株式上場を視野に入れた企業では、増資による資金調達を検討する価値があるでしょう。
社債の発行
大企業を中心に、社債の発行による資金調達が行われています。社債とは、企業が発行する債券のことで、一定の利回りが設定されています。
社債発行のメリットは、調達額を自由に設定できる点と、発行条件を柔軟に決められる点にあります。一方で、発行コストがかさむことや、一括返済が必要になるデメリットもあります。発行体制を整備し、適切な発行時期を見計らう必要があります。
補助金・助成金の活用
資金調達の方法として、補助金や助成金の活用も有効な選択肢となります。補助金・助成金は、国や自治体、公的機関から支給されるものですが、返済の必要がない大きなメリットがあります。
国の補助金制度
国が提供する主な補助金制度には、中小企業庁の「ものづくり補助金」や経済産業省の「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」などがあります。
「ものづくり補助金」は、中小企業者等が行う、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を支援する制度です。従業員数に応じて、補助上限額が設定されています。「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」は、クラウドサービスの導入経費に対して、中小企業者に補助金を交付する制度です。ITツールの活用を通じた生産性向上を後押ししています。
自治体の助成金制度
都道府県や市区町村レベルでも、様々な助成金制度が用意されています。地域の実情に合わせた支援策が展開されているのが特徴です。
例えば、東京都の「中小企業活性化支援助成金」は、中小企業者の経営革新や販路開拓を支援する制度です。対象となる取り組みは、新製品・新サービスの開発、販路開拓活動、IT活用、人材育成など多岐にわたります。助成率は2分の1以内で、上限額も設けられています。このように、自治体の助成金制度を上手く活用することで、事業の成長を後押しできます。
まとめ
本記事では、法人が利用できる様々な資金調達手段について解説してきました。創業期から成長期、さらには安定期に至るまで、企業は事業の各段階に合わせて、最適な資金調達方法を選択する必要があります。
負債による調達、資本による調達、資産の活用など、さまざまな選択肢がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。また、公的な支援制度を積極的に活用することも重要です。企業経営者は、自社の状況を冷静に分析し、中長期的な視点から資金調達戦略を立案することが求められます。本記事の内容を参考に、健全な事業運営と持続的な成長を実現していただければ幸いです。
よくある質問
法人が利用できる主な資金調達方法はどのようなものがありますか?
p: 法人が利用できる主な資金調達方法は、大きく分けて「負債による調達」「資本による調達」「資産の活用」の3つに分類されます。負債による調達では、金融機関からの融資や社債の発行、ファクタリングなどがあり、資本による調達では、株式の公募増資やベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディングなどが挙げられます。また、資産の活用による方法には、固定資産の売却やM&A、事業の一部売却などがあります。
創業期の資金調達では、どのような方法が有効ですか?
p: 創業期の資金調達では、まず自己資金の活用が重要です。さらに、国や自治体の提供する創業支援制度の活用や、クラウドファンディングなどが有効な選択肢となります。創業支援制度では、日本政策金融公庫の「新規開業資金」や東京都の「新規創業支援資金」など、低利融資やリターンの設定が柔軟なクラウドファンディングなどを活用することで、創業の準備を整えることができます。
既存企業が利用できる主な資金調達方法には何がありますか?
p: 既存企業が利用できる主な資金調達方法には、金融機関からの融資、増資による資本調達、社債の発行などが挙げられます。金融機関からの融資は比較的簡単に大口の資金を調達できる一方で、審査が厳しい場合があります。増資は返済義務がないメリットがありますが、既存株主の持ち分が希薄化するデメリットもあります。社債の発行は発行条件の自由度が高いものの、発行コストがかかるデメリットがあります。
補助金や助成金の活用は資金調達の選択肢として有効ですか?
p: はい、補助金や助成金の活用は資金調達の選択肢として有効です。国の「ものづくり補助金」や「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」、自治体の「中小企業活性化支援助成金」など、返済の必要がない大きなメリットがあります。公的機関から支給される補助金や助成金を上手く活用することで、事業の成長を後押しできます。