ご相談はコチラモットー先生
資金調達税務相談その他ご相談

自己資金50万円、日本政策金融公庫の融資はいくらまで受けられる?

財務省が管轄する政府系の金融機関である日本政策金融公庫。政府系金融機関として、開業資金から短期の運転資金まで、低金利の融資で個人事業主から中小企業までを支援しています。今回は、自己資金が少ない事業者でも検討しやすいと言われる日本政策金融公庫の融資について解説します。自己資金なしでも受けられるのかなど素朴な疑問にも答えますので、ぜひ参考にしてください。

日本政策金融公庫による融資には自己資金が必要

日本政策金融公庫は国が100%出資している公的な金融機関であるため、利益の追求を目的にしておらず、民間の金融機関と比べて「審査が通りやすい」「無担保や保証人なしでも融資が受けやすい」「低金利」といったメリットがあります。たとえば民間の金融機関の融資だと、一般的に金利の実質年率は1%~18%程度。一方、制度や条件によって異なるものの、公庫が提供している「新創業融資制度」の基準金利は実質年率2.20%~3.40%(2024年10月1日現在)と、民間の金融期間に比べると金利が低く設定されています。(出典:日本政策金融公庫「金利情報」

公庫が特に力を入れているのが創業支援です。会社を設立したり、新たに事業を始めたりする人向けに、無担保・無保証でも融資が受けられる制度もあります。融資を受けるために税理士に依頼をする必要はありませんが、顧問税理士がいることで審査基準における信頼度が高まることから、利率が割安になる融資プランなどもあるようです。
ただ融資を受けられる条件の中には「自己資金要件」というものがあり、「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」が条件となっているのです。たとえば500万円の融資を受けたいのであれば、自己資金を50万円を貯める必要があり、自己資金が100万円あれば1000万円までの融資が期待できます。

日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」のデータによると、創業資金として調達した総額に対して自己資金の占める割合は24%程度だそうで、どのくらいの資金が必要か計算した上で計画的に自己資金を貯めておくことが大切です。

なお、日本政策金融公庫は自己資金が少ないことのリスクについて、WEBサイトで以下のように説明しています。

借入に依存した計画では、思っていたほど売上が上がらなかったり、予想外の出費がかさんだりすると、資金繰りが苦しくなる場合があります。自己資金と借入金のバランスを考え、ゆとりを持った資金計画を立てることが大切です。

引用:日本政策金融公庫「創業計画Q&A」

創業資金にどのくらい掛かりそうか必要な資金をしっかりと見積り、その額の10分の1程度を準備しておくと安心です。

そもそも「自己資金」とは?

端的に説明すると、「自己資金」とは事業に自由に利用できる手元の資産のこと。自己資金は手元にあるお金だけを指すわけではありません。たとえば、不動産や什器なども資産として含まれる場合もあります。

一般的に自身の財産であり、出所が明確で、事業用資金として利用できるものが、自己資金として認められます。それではどんなものが自己資金として認められるのか、具体的にみていきましょう。

預金通帳のお金

最も一般的な自己資金として認められるのは、預金通帳に記載されているお金です。預金通帳に記載された残高が多ければ多いほど、融資の審査も有利に進む可能性が高いでしょう。

預金通帳のコピーなどを提出することで証明でき、多くの起業家や事業者は預金通帳の残高を自己資金の一部として活用しています。

ただ、融資は預金通帳の金額だけで判断されるものではありません。他の資産や資金もあわせて総合的に審査されるため、全体的な資金計画をしっかりと立てるようにしてください。なお、生活用口座と事業資金口座は分けておくようにしましょう。

家族からの援助や贈与

家族からの援助や贈与により取得したお金も、自己資金のひとつです。家族間の信頼関係によって行われるこのような形の資金提供は、返済条件などが柔軟に設定、または返済不要となっている場合があり、多くの起業家や事業者が利用しています。

融資を受ける際には、譲渡証明書や預金通帳のコピー、家族間での契約書などにより家族からの援助や贈与を正式に証明する必要があるので、しっかりと準備をしましょう。

退職金

従業員が会社を退職する際に支払われる退職金も、自己資金として認められます。勤務年数や役職、会社の規模や業績などによってその額は異なりますが、退職金は大きな金額となることが多く、起業や事業の資金として活用しやすいです。

一般的に融資を受ける際には、退職金の受領証明書や給与明細書など退職金の受領を証明するための書類の提出が求められます。

なお、融資を申し込む時点で退職金をまだ受け取っていない場合でも、退職証明書などの証明書類があれば、自己資金として認めてもらえる可能性があります。

保険の解約返戻金

保険を解約した際に受け取ることができる返戻金も、自己資金として認められます。資産形成の一環として多くの人が加入している保険ですが、事情により解約を選択する場合もあるでしょう。そのようなケースで得られる返戻金を自己資金として活用することも可能です。

返戻金は特定の保険商品や契約期間、支払った保険料の総額などに基づいて計算されます。融資を受けるためには保険会社からの通知書や証明書を提出することが求められますので、あらかじめ準備をしておきましょう

不動産などの資産を売却して得たお金

不動産や株式、貴金属、車などの資産を売却することで得たお金も自己資金として認められます。特に、大きな金額が動くのが不動産の売却。市場状況によっては数百万、数千万という大きな利益を生むこともあり、自己資金として活用するケースも少なくありません。

資産売却によって得たお金を自己資金の一部とし融資を受ける際には、売却の事実を証明するための書類が必要です。具体的には、不動産の場合は売買契約書や物件の登記簿謄本、株式の場合は売却証明書や取引明細書などが求められることが一般的です。

創業準備のために使った費用(みなし自己資金)

「預貯金を創業準備の費用に充ててしまって、自己資金にできる預金がなくなってしまった」という話もよくありますが、そのケースなら自己資金にできるかもしれません。新しい事業を始める際に必要な機械や設備の購入、店舗の保証金や敷金研究開発にかかった費用など創業準備のためにすでに使ったお金は「みなし自己資金」と言われ、自己資金として計上できます。

みなし自己資金は、事業が始まった後に自己資金を使って事業の費用を支払うことと実質的に変わらず、その事業の発展や収益性の向上を目的としていることから、自己資金として認められるのです。

融資を受ける際には、事業投資の事実を証明するための書類が必要となるので、事業計画書や投資の詳細を示す資料、購入した機器や施設の領収書、契約書などをしっかり取っておきましょう

不動産などの現物資産

現物資産も事業に利用する資産として申告できるため、自己資金にすることができます。たとえば、既存の事業で使用しているパソコン機械類、不動産、有価証券などを現物資産として申告すれば、自己資金を増やすことが可能です。なお、現物出資の評価額は、購入したときの価格ではなく、時価相場の価格となる点は注意が必要です。

なぜ現物資産が融資を受ける上で有効かというと、融資の際のリスク評価で現物資産の存在が事業の安定性や信用度を示す指標となるからです。たとえば新たな設備投資が必要な場合でも、既存の資産を担保として追加の融資を受けることも検討できます。

現物資産は、事業の実績や実力を示すもの。取引先やパートナーとの交渉の際にも信頼を獲得する理由と十分なり得るのです。手持ちの資産を新しい事業でも活用することを予定している場合は、それらの資産を自己資金として申告してみてはいかがでしょうか。

第三者割当増資により出資者から得たお金

出資者を募るという方法も考えられます。複数の出資者を持つことで、自己資金の総額を増やすことができ、融資を受けやすくなる可能性が高まるでしょう。

出資者が多い事業者は、事業の信頼性や安定性の証として金融機関に評価されやすくなり融資審査でもプラスに働くことが多いです。

出資者が多ければ多いほど、リスクの分散にもつながります。たとえば一部の出資者とのトラブルや支援の中断があった場合でも、他の出資者からのサポートを受けることができ、事業を継続しやすくなるからです。

また、出資者が増えることでネットワークが広がり経験を活かす機会が増えることも、事業継続という意味で見逃せない視点です。こういった積み重ねで、事業の拡大や新たな取引先の開拓、さらなる資金調達のチャンスなど可能性が広がるでしょう。

自己資金として認められないもの

以下については、一般的に自己資金としては認められません。日本政策金融公庫から融資を受けたい人はぜひ把握しておきましょう。

第三者から借りたお金

第三者から借り、将来的に返済義務があるお金は自己資金には認められません。「贈与」や「援助」などではなく、「借りた」お金というのは、必ず返済をしなければならないお金です。

返済が必要なお金は事業に自由に使えないと判断されるため、自己資金とは認められません。

見せ金

融資を受けやすくするために、金融機関や知人などから一時的に借りたお金を自己資金として計上する手口を「見せ金」と言います。

融資審査の際に見せ金が発覚すると、金融機関を騙す行為を働いたということで信用を失い、かなりのマイナス評価となります。会社の設立自体が無効になるケースもありますし、場合によっては詐欺罪に問われる恐れもあるので、絶対にやってはいけません。

タンス預金

自宅に保管している、いわゆる「タンス預金」も自己資金として認められません。タンス預金はいつからそのお金があったのかを客観的に確認できず、出所も不明なためです。

なお、「タンス預金がダメだから銀行に預けておこう」と慌てて行動することもおすすめできません。というのは、創業融資の審査では通帳を用いてお金の流れを確認しますが、通帳だけではお金の出所や詳細、借入金でないかの判断ができない場合は別の資料も追加で必要となってくるからです。特に融資直前に一気に入金してしまうと自己資金として認められない可能性があるので、計画的に入金しておくようにしましょう。

自己資金がゼロだと融資を受けるのは難しい

自己資金が全くない状態では、日本政策金融公庫とはいえ融資を受けるのは基本的に難しいと考えてください。自己資金が少ない状態だと、思っていたほど売上が上がらないときや予想外の出費が重なったときなどに経営が立ち行かなくなる恐れがあるため、自己資金が不足している事業者は返済が滞るリスクが高いと判断されやすいからです。

先ほどもご紹介したように、日本政策金融公庫から融資を受ける場合、目安として融資希望額の10分の1程度の自己資金が必要とされています。自己資金が少ないと感じている場合は、今手元にある「お金」だけに着目するのではなく、自己資金として認められる資産がないか改めて考えてみてください。

なお、売掛債権があるならば「ファクタリング」を検討するのもおすすめです。ファクタリングなら自己資金がなくとも、売掛債権があれば資金調達ができます。融資などに比べるとスピーディーに資金調達ができるケースが多いので、検討してみてはいかがでしょうか。