補助金と助成金は、どちらも国や地方自治体から交付される返済義務のないし資金です。いずれも返済不要の資金調達手段の一つですが、両者には主導する省庁や実施目的において違いがあります。
本記事では、補助金・助成金の違いや、メリット・難易度について解説します。経営者・個人事業主の方や、補助金・助成金の活用を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は、どちらも国や地方自治体から交付される返済義務のないし資金です。
しかし、両者には主導する省庁や実施目的において違いがあります。
ここでは、それぞれの制度の違いについて解説していきます。
補助金は経済産業省が主導
補助金制度とは、経済産業省が主導となり実施している制度です。
中小企業の活性化を目的として、補助金制度の要件を満たした事業主が制度に申請し、審査に通過した場合のみ補助金を受け取ることができます。
助成金は厚生労働省が主導
助成金制度とは、厚生労働省が主導となり実施している制度です。労働環境の改善や雇用対策を目的としており、助成金制度の要件を満たしている事業主は申請するだけで受け取ることが可能です。
補助金制度と違い、審査を経る必要が無い点が特徴です。
代表的な補助金の種類
ここでは、代表的な補助金の種類について解説します。
代表的な補助金制度には
- 小規模機事業者持続化補助金
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
こちらの4つが挙げられます。以下で詳しく説明していきます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模ビジネスの持続的発展を支えることを目的として補助金制度です。
一般型は上限金額が50万円とされており、「賃金引上げ枠」に該当することにより優先的に採択されます。
一般型の対象となるのは、
- 販路開拓・生産性向上に対する取り組みであること
- 業務効率化に対する取り組みであること
などが条件とされています。
また、賃金引上げ枠の対象となるのは、
- 給与支給額の増加
- 事業所内の最低賃金の引上げ
などが条件です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスによる経済社会の変化に対応するための、「思い切った」事業再構築を支援するための補助金事業を指します。
事業再構築補助金は、中小企業の新規事業分野への
- 進出等の新分野展開
- 業態転換
- 事業・業 種転換
- 事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等
この様に思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することを目的としています。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、設備投資や働き方改革・賃上げなど、小規模事業者が行う様々な施策への支援策として設けられた補助金制度です。
通常、3~5年にわたる事業計画書を作成する必要があり、
- 革新的なサービスや商品を生み出す
- 業務効率化を図る
などの要件を満たす必要があります。
また、数値目標として年3%以上の付加価値額の増加が要件とされています。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者のITツール導入時に、その経費の一部が補助される制度です。
ITツールの導入によって経営課題を解決し、業務効率化や生産性向上を促すことを目的としています。
2022年のIT導入補助金では、従来の「通常枠」と新たに創設された「デジタル化基盤導入枠」の2種類があります。
代表的な助成金の種類
ここでは、代表的な助成金の種類について解説します。代表的な助成金制度には
- 雇用調整助成金
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
これらの3つが挙げられます。以下で詳しく説明していきます。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、従業員の雇用を維持するための助成金制度です。
事業主が従業員に対して休業手当などを支払う際に、手当の一部に対して助成されます。
経済上の理由などにより、事業縮小や休業を余儀なくされた事業主が、雇用維持のために一時的に雇用調整を実施した場合に対象となります。また、従業員を他社へ出向させるなどして、雇用を維持した場合も支給対象となります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための助成金制度です。
非正規雇用の従業員をキャリアアップさせる費用の一部に対して助成されます。受給の要件には、
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- キャリアアップ管理者を置いていること
- キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の認定を受けていること
これらの事があります。
両立支援等助成金
両立支援等助成金は、子育てや介護・不妊治療などの両立支援のための助成金制度です。
育児休業や介護休業、不妊治療のための休暇制度の実施、相談対応を行った事業者に対して助成されます。両立支援等助成金には、
- 出生時両立支援コース
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 不妊治療両立支援コース
これらの様々なコースがあります。自社でどのコースが該当するのか確認してみましょう。
補助金・助成金のメリット
ここでは補助金・助成金のメリットについて解説します。
補助金・助成金のメリットには
- 返済不要である
- 事業価値の向上に繋がる
といった点が挙げられます。以下で詳しく説明していきます。
返済不要である
補助金・助成金のメリットには、返済不要であるという点が挙げられます。
新規事業を立ち上げる際には、自己資金の不足分は銀行や信用金庫といった金融機関から融資を受けることが一般的です。
しかし、事業性融資は5年~7年という比較的短い期間で返済する必要があるため、事業が軌道に乗るまでの期間は資金繰りを圧迫する可能性もあります。
補助金は制度により補助率は異なりますが、事業に必要な経費の一部に対して返済不要の補助が行われるため大きなメリットが得られます。
事業価値の向上に繋がる
補助金・助成金のメリットには、事業価値の向上に繋がるという点が挙げられます。
多くの補助金・助成金では、採択までに事業に関する書類審査や面接審査などを経る必要があります。
実現可能性が高い事業計画の作成は、単に補助金・助成金の審査を通過するためだけではなく、事業価値の向上にも影響を及ぼします。
事業計画の作成を通じて事業価値を向上させることで、企業の信用度の向上にも繋がるでしょう。
事業計画をブラッシュアップできる
補助金・助成金のメリットには、事業計画をブラッシュアップできる点が挙げられます。
補助金・助成金の申請書作成という作業を通じて、自社の事業計画を客観的に見ることができます。
補助金・助成金の申請書を作成する過程を通じて、自社の事業計画の競争優位性や改善点を発見することができます。
一方、申請書で問われている事項に答えられていない場合には、内容や表現について再検討する必要があります。
社内体制を整備できる
補助金・助成金のメリットには、社内体制を整備できる点が挙げられます。
雇用関連の助成金などでは、就業規則・出勤簿・労使協定書など多くの書類を準備する必要があります。それらの書類を準備する過程は、必然的に社内体制を整えることに繋がります。
補助金・助成金のデメリット
ここでは、補助金・助成金のデメリットについて解説します。
補助金・助成金のデメリットには、
- 情報収集が難しい
- 入金までに時間を要する
といった点が挙げられます。以下で詳しく説明していきます。
情報収集が難しい
補助金・助成金のデメリットには、情報収取が難しいという点が挙げられます。
補助金・助成金の利用を検討する際には、事業者自身が情報収集を行うことから始まります。
以前は行政機関の窓口などでしか情報を得ることができず、自社にとって最適な補助金・助成金制度の情報を得ることは困難でした。
現在はインターネットを活用することで情報収集が容易となりました。
しかし、補助金・助成金の公募要項は一読しただけで理解することは難しい部分もあるため、自社に最適な補助金・助成金制度かを判断するには、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
目的や対象者が限られている
補助金・助成金のデメリットには、目的や対象者が限られているという点が挙げられます。
補助金・助成金は、公募要項において使用目的や対象条件が細かく定められています。
条件に合致しなければ申請することもできないため、補助金・助成金の利用を検討する際には公募要項をしっかりと確認しましょう。
手続きが繁雑である
補助金・助成金のデメリットには、手続きが繁雑であるという点が挙げられます。
補助金・助成金の申請に際しては、多くの書類を作成・提出する他にも、数回の面談を経る必要があるなど手続きが繁雑です。
補助金・助成金が採択された後の申請においても、事務処理や事後報告には多くの手間がかかります。補助金・助成金の受給に際しては、これらの適切な手続きを経なければ受け取ることができないため、必要に応じて専門家のサポートを受けることをおすすめします。
入金までに時間を要する
補助金・助成金のデメリットには、入金までに時間を要するという点が挙げられます。
補助金・助成金の利用を検討する方の中には、必要経費の支払い前にお金を受け取れると誤解されている方も少なくありません。
補助金・助成金は申請が採択されてから補助事業を開始し、事業に必要な経費は自身で立て替え、事業終了後に精算するという流れになります。
そのため、立て替えに必要な資金は自己資金やつなぎ融資を活用するなどの方法で調達する必要があります。
課税対象となる
補助金・助成金のデメリットには、課税対象となるという点が挙げられます。
補助金・助成金の受け取り時は、営業外収益として計上し課税対象となります。
ただし、一定の条件に合致する場合、圧縮記帳と呼ばれる会計処理を用いることで納めるべき税金を将来へ繰り延べることもできます。
補助金・助成金の会計処理を行う際には、適切な処理を行うためにも税理士へ相談することをおすすめします。
補助金・助成金の難易度
ここでは、補助金・助成金の難易度について解説します。助成金の場合、制度に合致すれば審査を経ずとも受給することが可能です。
一方、補助金の場合、補助事業に対して行われる審査を経る必要があります。以下で詳しく説明していきます。
代表的な補助金の採択率
代表的な補助金の採択率について下表にまとめます。補助金の難易度については、制度によって趣旨や対象業種が異なるため一概には言えません。
各補助金制度の採択率に着目すると、いずれの補助金制度も40~70%の採択率となっていることがわかります。
ものづくり補助金【一般型】 | 採択率:62.4% 応募件数:2,287 採択件数:1,429 公表時期:令和4年3月 |
IT導入補助金 | 採択率:54.9% 応募件数:52,026 採択件数:30,825 公表時期:令和4年1月 |
小規模事業者持続化補助金 | 採択率:約69% 応募件数:未発表 採択件数:未発表 公表時期:令和3年12月 |
事業再構築補助金 | 採択率:44.7% 応募件数:19,673 採択件数:8,810 公表時期:令和4年3月 |
まとめ
本記事では、補助金・助成金の違いや、メリット・難易度について解説しました。
補助金・助成金のメリットには「返済不要である」「事業価値の向上に繋がる」といった点が挙げられます。
一方、デメリットには「情報収集が難しい」「入金までに時間を要する」といった点が挙げられます。
「資金の先生」では資金調達や税金に関する相談を受け付けております。経営者・個人事業主の方や、補助金・助成金の活用を考えている方は、お気軽にお問い合わせください。