消費税の納付において、一定要件を満たす課税事業者である場合、中間申告による納付が義務づけられています。
消費税の中間納付額の計算方法には、予定申告方式と仮決算方式の2種類があり、仮決算方式には節税効果はないものの、資金繰り面で一定のメリットが得られます。
また、消費税と法人税・事業税との関係についても気になる点の一つです。
本記事では、消費税の納付について、中間納付の概要や仮決算による納付方法について解説します。
消費税の中間納付が必要な方や、仮決算による納付を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
消費税の中間申告とは
消費税の中間申告とは、現在の課税期間の確定消費税額を概算で見積もり、その一部を前払いで申告・納付することを指します。
直近の課税期間中に申告した消費税額が、一定額を超えた場合、直後の課税期間において中間申告の義務が生じます。
消費税の納付額が一定の金額を超えた場合、全額を一括で納付することは企業の資金繰りを圧迫する要因となります。
そのため、一括納付による負担を軽減し、複数回に分割して納付することが可能となるよう制度が設けられています。
ここでは、対象となる企業、申告・納付の回数、期限などについて詳しく解説していきます。
対象となる企業
消費税の中間納付の対象となる企業は、地方消費税を除く前事業年度の消費税の年税額が48万円を超える企業です。
中間納付の対象企業の判定においては、地方税である地方消費税は含まれず、国税のみが判定の対象です。
消費税は国税と地方税を一括して納付するため混同しやすいため注意しましょう。
自社が対象かどうか判断に迷った場合、消費税の課税事業者となる基準である「前事業年度分の課税売上が1,000万円を超える企業」を基準に考えるようにしましょう。
他にも、前事業年度分として提出済みの「消費税及び地方諸費税の確定申告書」の国税分である「差引税額(9)」が、48万円を超えているかどうかを確認することで判断する方法があります。
申告・納付する回数
消費税の申告・納付する回数は下表の通りです。前事業年度の消費税の年税額によって回数が異なるため注意が必要です。
国税・地方税を合わせた消費税額を用いて判断する場合、下表の()内の年税額を参考にしてください。
また、国税が48万円以下の場合、中間申告・納付の対象外となるため、消費税の申告回数は一括納付になります。
ただし、「任意の中間申告制度」が設けられているため、自主的に中間申告書を提出するすることで、年1回のみ中間納付の適用を受けることができます。
任意の中間申告制度では、3回や11回は適用不可である点に注意しましょう。
前事業年度の消費税の年税額 | 申告回数 |
国税48万円以下(地方税を含む60.95万円以下) | 0回 |
国税48万円超400万円以下 (地方税を含む60.95万円超507.93万円以下) | 年1回 |
国税400万円超4,800万円以下 (地方税を含む507.93万円超6,095.23万円以下) | 年3回 |
国税4,800万円超(地方税を含む6,095.23万円超) | 年11回 |
出所:国税庁「中間申告の方法」、財務省「消費税の申告・納付制度の改正の経緯」
納付期間
消費税の中間申告には、各回に対して納付期限が定められています。
納付期限は、「各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内」が原則とされており、郵送で申告する場合は通信日付印により表示された日に提出されたものとみなされます。
ここでは、3月決算法人(課税期間は4月1日~翌年3月31日)のケースを例に詳しく説明していきます。
中間申告が年1回の場合、事業年度を6ヶ月で区分します。3月決算法人のケースでは、前期(4月1日~9月30日)、後期(10月1日~3月31日)に区分されます。
前期の課税期間末日は9月30日となるため、納付期間は10月1日~11月30日となります。
中間申告が年3回の場合、事業年度を3ヶ月ごとに区分します。
3月決算法人のケースでは、中間申告の対象となる各課税期間は、1回目が(4月1日~6月30日)、2回目が(7月1日~9月30日)、3回目が(10月1日~12月31日)となります。
そのため、納付期間は1回目が7月1日~8月31日、2回目が10月1日~11月30日、3回目が納付期間は1月1日~2月28日となるのです。
中間申告が年11回の場合、毎月申告・納付を行います。
納付期間は、課税期間開始後の1ヶ月分を「課税期間末日の翌日から2ヶ月以内」に納付します。
各月とも翌月1日より起算して2ヶ月以内に納付します。最終課税期間である3月は決算書を基に、確定申告で最終納付額を算出します。
ただし、4月分の納付は5月分と同じ6月1日~7月31日が納付期間となります。
これは、4月、5月は確定申告の手続き期間と重なるため配慮がされています。また、中間申告書の提出は各回において必要となるため注意が必要です。
消費税の中間申告の計算方法
消費税の中間申告の計算方法には、「予定申告方式」と「仮決算方式」の2種類があります。
ここでは、それぞれの計算方法について解説していきます。いずれの方法によっても、国税と地方税を合わせて納付する必要がある点に注意しましょう。
予定申告方式
予定申告方式は、前事業年度における課税期間の確定消費税額を、申告回数に応じて分割し計算する方法です。
管轄する税務署から送付される「消費税及び地方消費税の確定申告書」と「納付書」には予定申告方式に基づく納付額が記載されています。
これらに必要事項を記載して申告・納付を行います。
中間申告が年1回の場合、1回につき確定消費税額の1/2の金額を納付します。中間申告が年3回の場合は1/4の金額を、年11回の場合は1/12の金額を各回で納付します。
仮決算方式
仮決算方式は、中間申告の対象期間を1事業年度とみなして仮決算を行い、それに基づいて各回の消費税額を計算する方法です。
3月決算法人で年1回中間申告をする場合、4月1日~9月30日までの6ヶ月間を1事業年度とみなします。
仮決算方式では、本決算とで作成する「消費税及び地方諸費税の確定申告書」を各回で作成し、納付する消費税額を計算します。
仮決算方式には、前期に比べ業績が著しく悪化している場合や、仮決算方式を選択するほうが消費税額を下げられる可能性がある場合など、仮決算方式によって資金繰りを改善できるメリットがあります。
一方で、各回において仮決算による申告書を作成するため、業務負担が大きくなるというデメリットがあります。
また、仮決算方式で計算した税額がマイナスとなった場合でも、税金の還付は受けることができない点に注意が必要です。
消費税の中間申告・納付で注意しておきたいポイント
ここでは、消費税の中間申告・納付で注意しておきたいポイントを紹介します。
内容によっては延滞税等を課されるものもあるため、しっかりと把握するようにしましょう。
申告書を提出しなかった場合
申告書を提出しなかった場合、予定申告方式での申告書の提出があったものとみなされ、全課税期間の消費税の年税額を基準にして計算された消費税額が適用されます。
延滞税等の発生はありませんが、消費税及び地方諸費税の確定申告書は申告期限を過ぎて提出できないため、仮決算方式での申告ができなくなります。
消費税の納付が遅れた場合
消費税の納付が遅れた場合、納付期限の翌月から実際に納付した日までの期間に対して延滞税が課されます。
延滞税は、国税・地方税の合算に対して発生し、納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでは原則として年7.3%、2ヶ月を超えると原則年14.6%の利率が加算されます。
中間申告・中間納付等の制度を利用する際には、各期間に対応した納付期限を超えないよう注意しましょう。
中間納付税額の経理処理方法
中間納付税額の経理処理方法には、「税抜処理」と「税込処理」があります。
税抜処理を採用している場合、中間納付時の消費税額は「仮払金」として仕訳します。
会計システムによっては、「仮払消費税等」という勘定科目になっていることもあります。
一方、税込処理を設定している場合、中間納付時の消費税額は「租税公課」として仕訳します。
中間納付税額の仕訳については、会計システムでどちらの処理方法を設定しているかによって勘定科目が異なります。
自社の会計システムの設定について確認するようにしましょう。
消費税と法人税の関係
ここでは、消費税と法人税の関係について説明します。
消費税で仮決算による中間申告をした場合において、法人税も必ず仮決算による中間申告が必要という訳ではありません。
消費税と法人税の仮決算時の処理は次のように選択することが可能です。
消費税・法人税ともに仮決算をしない場合
消費税・法人税ともに仮決算をしない場合、両方ともに予定申告による納付となります。
予定申告した消費税等は確定申告時に精算されます。
法人税のみ仮決算をした場合
法人税のみ仮決算をした場合、仮決算による未払消費税額等と予定申告の消費税等との差額は、法人税の仮決算上益金または損金の額に算入されます。
消費税・法人税ともに仮決算をした場合
消費税・法人税ともに仮決算をした場合、仮決算時と確定申告時にそれぞれ原則どおり仮受消費税、仮払消費税の精算を行います。
まとめ
本記事では、消費税の納付について、中間納付の概要や仮決算による納付方法について解説しました。
消費税は中間納付や仮決算を活用することで、資金繰り面においてメリットを受けることができます。
前事業年度の確定消費税額から、中間納付の有無や納付回数・納付期限についてしっかり把握しておきましょう。
また、「資金の先生」では資金調達や税金に関する相談を受け付けています。
さまざまな方法から最適な選択肢をご提案することが可能なため、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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