法人として事業を営むうえで、「法人税」「法人事業税」「法人住民税」は、必ず納付しなければならない税金です。
これらは、3つまとめて「法人税等」と呼ばれますが、納付先や課税される対象が異なります。
本記事では、法人事業税について概要や税率・計算方法を解説していきます。法人の経営者の方は、納税計画を立てる際に参考にしてみてください。
目次
法人税等について
法人税等は、法人として事業を営むうえで必ず納めなければいけません。法人税、法人事業税、法人住民税の3つにより構成されています。
法人税は、国に納付する国税に該当します。一方、法人事業税と法人住民税は、地方自治体に納付する地方税に該当します。
納付先は異なりますが、いずれも法人税法によって納税義務が定められています。
法人税等の確定申告の納付期限は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内となっています。この期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税が発生するため注意が必要です。
法人事業税とは
法人事業税は、法人が事業を営むにあたって利用する、公共サービスや公共施設について、その経費の一部を負担する目的で課税されます。
法人の事業所が位置する地方自治体が課税するため、納付先は各地方自治体になります。法人事業税の納税義務者は、都道府県に事務所や事業所を設けて事業を行っている法人、収益事業を行っている人格のない社団・財団が該当します。
法人事業税の納税義務者
法人事業税は、事業を行うすべての法人に納税義務があります。ただし、公共法人や公益法人などによる、公共事業に関わる所得については例外的に課税されません。
また、公益法人や人格のない社団は、収益事業のみが課税対象となるため、収益金額課税法人とも呼ばれます。法人の種類と課税対象の有無については、下表のとおりです。
法人の種類 | 具体例 | 課税の有無 |
普通法人 | 株式会社、有限会社(特例有限会社)、合名会社、合資会社、医療法人、企業組合など | 課税対象 |
協同組合等 | 農業協同組合、労働者協同組合、信用金庫など | 課税対象 |
公益法人 | 宗教法人、財団法人、社団法人、学校法人など収益事業のみ | 課税対象 |
人格のない社団 | PTA、同窓会、実行委員会など | 原則課税対象外 (収益事業を行って収益を得たときのみ、課税対象となる) |
公共法人 | 地方公共団体、国民金融公庫、国立大学法人など | 課税対象外 |
法人事業税の申告と納付
法人事業税は、法人税と同様に確定申告によって申告・納税をします。
申告期限についても法人税と同じく、事業年度終了後2ヶ月以内が原則です。また、事業年度が6か月を超え、かつ前事業年度における法人税額が20万円を超える普通法人は、中間申告とその納付も必要となります。
法人事業税の税率と計算方法
ここでは、法人事業税の税率と計算方法について解説します。法人事業税の税率は、資本金の額が1億円以下かどうかで変わります。
法人事業税の計算式
法人事業税の計算式は以下のとおりです。
法人事業税額=課税所得×法人事業税率
法人事業税率は、法人の種類や課税所得、事業開始年度によって区分が決まります。
また、税率は各都道府県によって異なるため、事前の確認が必要です。
一例として、東京都では資本金1億円以下の普通法人・公益法人等・人格のない社団等の法人事業税率は所得金額によって区分され、標準税率が適用された場合は下記のようになります。
・課税所得400万円以下の部分:3.4%
・課税所得400万円超800万円以下の部分:5.1%
・課税所得800万円超の部分:6.7%
法人事業税の税率判定
法人事業税の税率判定は、各都道府県独自のルールに従って行われます。
資本金額や年間所得などによって、軽減税率・標準税率・超過税率のいずれかが適用されます。これらの適用基準は、各都道府県に対して事前に確認しておくとよいでしょう。
外形標準課税について
外形標準課税とは、法人の事業規模を税額判定に盛り込む課税方式です。
事業規模を正確に把握するため、通常の事業所得に加え、事業所の床面積・従業員数・資本金など外観から客観的に判断できる要素を使います。
東京都の例では、資本金の額または出資金の額が1億円超の法人が外形標準課税の対象となります。以下の、所得割・付加価値割・資本割の3つの要素を合算することで、法人事業税の税率が決まります。
・所得割:各事業年度の所得金額に比例して課税されるもの
・付加価値割:各事業年度の収益分配額と単年度の損益を合算した付加価値額に応じて課税されるもの
・資本割:各事業年度の資本金金額に応じて課税されるもの
法人事業税の特徴
法人事業税の特徴は、翌年の損金に算入できるという点があります。
損金とは、税法上認められる費用の一部をいいます。従って、法人事業税は税金でありながら、費用として計上することが可能なのです。
法人事業税は、事業そのものに課税される物税であるという考えから、このような取扱いとなっています。
法人税、法人住民税との違い
法人税、法人住民税との違いについてまとめると、下表のとおりになります。
納税先 | 課税基準 | 赤字の場合の扱い | 損金算入の可否 | |
法人税 | 国 | 会社が得た各事業年度の所得 | 支払い義務なし | できない |
法人事業税 | 地方自治体 | 会社が得た各事業年度の所得 | 支払い義務なし | できる |
法人住民税 | 地方自治体 | 法人所得税を基準に算出される「法人税割」と資本金額や従業員数に応じて算出される「均等割」の合計 | 支払い義務あり(均等割の部分) | できない |
まとめ
本記事では、法人事業税について概要や税率・計算方法を解説してきました。
法人税等は、法人税・法人事業税・法人住民税の3つから構成され、これらの基礎知識について正しく理解しておきましょう。
実際の申告や納税の手続きは、税理士や会計士に依頼する場合が多いでしょう。しかし、税務についての基礎的な知識を正しく理解し、適切な入出金管理を行う事で、各種申告や納税作業をスムーズに進めることができます。
法人として事業を営む経営者の方は、これを機に税務についての理解を深めましょう。
法人が納める必要のある税金については『【最新版】会社が納める税金一覧』にて説明していますので、よければチェックしてみてくださいね。