事業資金融資の返済が苦しくなったので、銀行に依頼して返済額を減らしたり、返済期限を延長してもらうのがリスケです。
では、リスケ中でも融資を受けることはできるのでしょうか?
リスケ中は、原則として新規融資は受けることはできません。
しかし最近では、リスケ中でも融資が受けられる場合があるのです。
今回は、この点を銀行員が解説します。
目次
執筆者プロフィール
加藤隆二
勤続30年以上、まだまだ現役の銀行員。
融資担当として事業資金調達から、住宅ローン、カードローンなど借入全般に従事。
そのなかで返済が困難な人の相談にも対応してきました。
仕事を通して、数え切れないほどのお客様と会い、相談に乗り、一緒に悩んだ経験では誰にも負けません!
この記事を読むとわかること
この記事を読めば、リスケ中に融資を受けられるのか?
そして、注意点などがわかります。
リスケ中でも融資は受けられるのか?
従来、銀行などの金融帰化では、リスケをしている債務者に新規融資はしませんでした。
これは日本政策金融公庫などの公的融資も同じで、借りている融資の返済ができない企業に、新しくお金を貸すことできない、というシンプルな理由です。
では、どうしてリスケ中でも融資を受けられるようになったのでしょうか?
それは監督官庁である金融庁と、その背後にある国の施策、指導の変化から来るものです。
変化の理解するため、順を追いながら説明していくことにします。
リスケとは?
リスケ(Reschedule・リスケジュールの略)とは、返済条件のの見直しという意味です。
融資の「返済額」「返済期間」「金利」などを融資の条件と呼び、リスケはこうした融資の条件を変更します。(この点から、リスケを条件変更とも呼んでいます)
詳しくは『【資金調達するなら知っておきたい】リスケってなに?』にて解説しています。
原則、リスケ中に融資しない理由
繰り返しになりますが、これまでは原則としてリスケ中に銀行は融資をしませんでした。
これは「借金を返せない人に、追加でお金は貸せない」という点に尽きます。
言い換えれば、借金が返済できなくなったからリスケをしているわけであって、その企業にに新規融資をしても、前の借金の返済に回る可能性が高く、新規融資も返済できなくなるという理屈なのです。
この理屈を難しく表現すると「銀行が金融仲介機能を維持するため」となります。
金融仲介機能とは?
金融仲介機能とは
- 顧客から預金を集め
- 集めた預金を企業に融資して
- 金利と一緒に返済してもらい(債権の回収と表現)
- 回収したお金をもとに、満期に預金を顧客に返す
こうしたお金の流れのことで、言ってみれば金融間の存在意義です。
そして
- 融資金が回収できなくなれば
- 満期になっても預金を返せなくなる
- そうなると金融仲介機能が維持できなくなり
- だれも預金してくれなくなる
ということになります。
融資したお金も、もともとは預金者のもの(全てではありませんが)で、銀行は必ず回収する義務があります。
そのため、融資が返済できないからリスケ中の企業には追加融資できないのです。こうしたリスケの特徴から、リスケしている融資金(銀行から見ると債権)を「貸出条件緩和債権」とも表現します。
「金融仲介機能」「貸出条件緩和債権」といった表現は、銀行の健全性を表すため、保有している債権を自ら査定(仕分け、格付といった意味)する「自己査定」で使われる用語です。
なぜリスケ中でも融資を受けられるようになったのか?
リスケ中でも融資を受けられるようになった理由は、監督官庁である金融庁と、その背後にある国の施策、指導の変化から来るもの(前述)です。
ここは前項と同じように、要点だけ説明します。
- 不況などを要因として、国が「もっと金融仲介機能を発揮せよ」と金融機関に指導
- また国は「無理をして金融機関の経営が悪化してもある程度は助ける」とも示達
- また➁「リスケ先に新規融資する銀行も金融仲介機能を発揮している」となった
- 逆に上記①➁の2つともできない銀行は、金融仲介機能を発揮していないことになる
つまり
「リスケしている債務者にも融資をしろ」
「いや、そもそもリスケ先を減らせ」と国から大号令が下ったのです。
ところでリスケ先がリスケ先でなくなる(リスケの卒業と表現)のは、業績が改善して返済をもとに戻すことができ、返済条件を緩和している債権がなくなったということですが、現実はそのような企業ばかりではありません。
そこで、リスケ先を減らすために行われるのが「借換え」つまりリスケ中でも受けることのできる融資が「借り換え」です。
リスケ中でも受けられる融資「借り換え」
借り換えとは新規に融資をして、それまでリスケしていた融資金を回収する方法です。
言ってみれば「新規融資で、リスケを無かったことする」のです。
- リスケしている融資金があるから新規融資できない
- でも、借り換えしてリスケ中の融資が無くなれば
- その企業はリスケ先ではない
という論法です。
なにかこじつけのようでもありますが、現実としてこのように手っ取り早くリスケ先を減らすため、銀行ではリスケしている融資を借り換えしてしまうことにしたのです。
これはいわば「借入のリセット」です。
また一定の条件が揃えば、借換のときに増額も可能です。
そして、借り換えするとリスケ先ではなくなるので(前出)、新規の融資相談にも応じてくれる場合もあります。
*具体的な対応については必ずご自身で確認してください。
まとめ
金融機関はリスケ中の債務者に対しても柔軟に対応するようになってきました。
「金融円滑化に対する方針」「クレジットポリシー」(融資の基本的な方針といった意味)などが銀行ホームページなどで公表されています。
しかしながらその反面、個々の企業に対する対応はケースバイケースでもあるので、全てが顧客の思い通りに進むとも限りません。「貸し渋り」「貸しはがし」といった事例も全くなくなってはいません。
たとえばあなたの会社が銀行に相談して、あまりに冷たい、あまりにひどい対応をされたなら、毅然として対峙するべきです。
リスケしていたとしても、あなたの会社はその銀行で大事なお客様なのです。
銀行の融資に関する対応の苦情、相談は金融庁など監督官庁に専門の窓口が設置されていますので、リスケ中だからとすぐあきらめず、まずは相談することをおすすめします。