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個人事業主なら知っておきたい「個人事業税」の概要や計算方法

個人事業税とは、個人事業主であれば把握しておきたい税金の一つです。

前年度の所得が290万円を超えた場合に、各都道府県へ支払が必要となることが一般的であり、全額を経費として計上することが可能です。本記事では、個人事業税の概要や計算方法について解説していきます。

個人事業主の方は、自身の帳簿作成の際に参考にしてみてください。

個人事業税とは

個人事業税とは、住民税や固定資産税と同じく「地方税」に分類される事業税の1つです。

地方税のうち都道府県税に分類され、都道府県が課税主体となります。従って、東京都で事業を行っている場合は東京都、大阪府で事業を行っている場合は大阪府へ納付します。


個人事業税の徴収理由は、「個人事業者は収益を伴う事業を展開する上で、さまざまな行政サービスを利用していると考えられることから、その利用に関する行政経費の一部を負担する」とされています。

ここでいう行政サービスとは、公共施設や公道の利用等が当てはまるでしょう。

個人事業税の対象となる業種

個人事業税の対象となる業種は、法律で定められた70の業種のみです。

これらの業種に該当しない場合、個人事業税は課税されません。70の業種は第一区分から第三区分まで3つの区分に分けられており、区分ごとに税率が異なります。自社の業種が該当するか不明な場合、事業所が位置する都道府県に問い合わせ確認してみましょう。

以下に、70業種については表にまとめます。自社の業種がどの区分に該当しているかの参考としてください。

第一区分
(37業種)
税率5%
物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業 、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業
第二区分
(3業種) 税率4% 畜産業、水産業、薪炭製造業
第三区分
(30業種) 税率5% 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業
税率3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業、装蹄師業
参照:東京都主税局
第二区分
(3業種)
税率4%畜産業、水産業、薪炭製造業
第三区分
(30業種)
税率5%医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業
税率3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業、装蹄師業
参照:東京都主税局



個人事業税の納付時期・方法

個人事業税の納付時期は、原則8月末日と11月末日の2回に分けられます。

また、納付期限は各都道府県によって異なるため、都道府県の公式ホームページ等で確認する必要があります。納税通知書は、1回目の納付期限である8月付近に送られてくることが多いです。

個人事業税の納付方法には、「金融機関での納付書による払込」「コンビニでの納付書による払込」「口座振替」「クレジットカード」「スマートフォン決済」などさまざまです。

個人事業税の計算方法

個人事業税の納付額は住民税等と同じように、各都道府県税事務所が前年の確定申告の内容をもとに計算し、納税通知書が送付されます。従って、納付する上では自分で計算する必要はありません。しかし、計算方法を理解し概算金額を算出することで、資金繰りやキャッシュフローの把握に役立てることができます。個人事業税の計算式は以下の通りです。

個人事業税={所得(収入-必要経費)-個人事業税の計算で適用可能な各種控除}×法定業種ごとに定められた税率

個人事業税の計算では、基礎控除のような所得控除や青色申告特別控除は対象外です。個人事業税の計算で適用可能な各種控除は以下の通りです。

控除の種類概要
事業主控除すべての者が適用できる年間290万円分の控除
白色申告事業者の個人事業税の専業専従者給与控除額 配偶者86万円、それ以外は1人50万円までの範囲で控除
青色申告事業者の個人事業税の専業専従給与控除額青色専従者への適切な給与支払額の全額
損失の繰越控除事業所得の赤字を繰り越して控除とした金額(最大3年間繰越)
被災事業用資産の損失の繰越控除白色申告事業者で震災や風水害などで生じた事業用資産の損失金額(最大3年間繰越)
被災事業用資産の損失の繰越控除 白色申告事業者で震災や風水害などで生じた事業用資産の損失金額(最大3年間繰越)
譲渡損失の控除と繰越控除
事業用に供する資産の譲渡によって生じた損失額の控除(青色申告事業者は最大3年間繰越)

一例として、「収入500万円」「必要経費100万円」「事業税控除のみ適用」「第1事業(税率5%)」である場合、下記の通り計算されます。

(500万円-100万円-290万円)×5%=55,000円

個人事業税の仕訳と勘定科目

個人事業税は、所得税法上の必要経費として計上可能です。個人事業税の支払いは「一定規模以上の事業を行う上で必ず発生する支出=事業継続のために必要な支出」と判断されるためです。

個人事業税は「租税公課」という勘定科目で処理します。個人事業税50,000円を現金で納付した場合の仕訳例は以下の通りです。

借方貸方
租税公課 50,000現金 50,000

個人事業税の他にも、「固定資産税」「都市計画税」「自動車税」なども租税公課として経費計上することが可能です。

ただし、自宅や自家用車などはプライベートでの共用部分が含まれるため、家事按分による合理的な計算方法のもと、事業用として使用している部分に相当する金額のみを経費として計上します。

まとめ

本記事では、個人事業税の概要や計算方法について紹介しました。

個人事業税は、法定業種に該当する事業を営む個人が、各都道府県へ支払う地方税です。事業主控除が290万円あるため、所得が290万円以上にならない限りは原則課税されません。事業による所得が290万円を超えそうな場合、翌年度に個人事業税の支払いが発生することを意識するようにしましょう。

また、個人事業税として支払った金額は経費として計上することができます。仕訳方法や勘定科目を正しく理解し、適切な記帳を行う事で効率的に節税を図っていきましょう。