目次
はじめに
グローバル化が急速に進む現代において、中小企業の海外展開は企業成長の重要な鍵となっています。しかし、海外での知的財産権の取得や市場参入には多額の費用がかかり、多くの中小企業にとって大きなハードルとなっているのが現状です。こうした課題を解決するため、国や地方自治体では様々な助成金制度を設けて、中小企業の海外展開を積極的に支援しています。
本記事では、中小企業海外展開支援事業をはじめとする各種助成金制度について詳しく解説します。知的財産権の海外出願から実際の市場参入まで、段階的な支援制度の全体像を把握することで、貴社の海外展開戦略立案に役立てていただけることでしょう。
海外展開支援の必要性
近年、国内市場の縮小や少子高齢化の進行により、中小企業においても海外市場への展開が生存戦略として不可欠となっています。しかし、海外での事業展開には言語の壁、法制度の違い、現地パートナーの確保など、数多くの課題が存在します。特に知的財産権の保護については、海外での模倣品対策や権利侵害への対応が重要な課題となっており、適切な権利化戦略が求められています。
このような背景から、政府は「未来投資戦略」や「知的財産推進計画」において、中小企業の海外展開支援を重点施策として位置づけています。単なる資金面での支援だけでなく、専門家によるコンサルティングや現地情報の提供など、包括的な支援体制を構築することで、中小企業の海外展開成功率の向上を目指しています。
支援制度の種類と特徴
中小企業向けの海外展開支援制度は、大きく分けて知的財産権関連、市場開拓関連、資金調達関連の三つのカテゴリーに分類されます。知的財産権関連では、外国出願費用の補助や権利化手続きの支援が中心となり、市場開拓関連では展示会出展費用や市場調査費用の補助が主要な支援内容となっています。また、資金調達関連では政府系金融機関による低利融資や信用保証制度の充実が図られています。
これらの支援制度は相互に連携しており、例えば知的財産権を確保した後に市場開拓支援を受けるといった段階的な活用が可能です。また、国の制度だけでなく、各地方自治体独自の支援制度も充実しており、企業の所在地や事業内容に応じて最適な制度を選択することができます。重要なのは、自社の海外展開戦略に合わせて、これらの制度を効果的に組み合わせて活用することです。
申請時の注意点
助成金の申請にあたっては、まず自社が対象要件を満たしているかを慎重に確認する必要があります。中小企業基本法上の中小企業の定義、税金の滞納がないこと、暴力団等との関係がないことなど、基本的な要件に加えて、各制度固有の条件も存在します。また、申請書類の準備には相当な時間を要するため、余裕を持ったスケジュール管理が重要です。
さらに、多くの助成金制度では事前申込みや事前相談が必要となっており、実際に費用を支出する前に申請手続きを完了させる必要があります。後払い方式の補助金が多いため、一時的な資金負担についても考慮しておく必要があります。専門家のサポートを受けながら、計画的に申請準備を進めることが成功のポイントです。
中小企業海外展開支援事業の概要

中小企業海外展開支援事業は、中小企業等の戦略的な外国出願を促進し、知的財産権を活用した海外展開を支援することを主要な目的として設計された国の重要な支援制度です。本事業では、海外における発明、実用新案、意匠、商標の権利化のための出願費用をはじめ、特許出願に対する拒絶理由通知への応答や審査請求に要する経費の一部を交付しています。
この制度の特徴は、単なる資金支援にとどまらず、知的財産戦略の立案から権利化、活用まで一貫してサポートする点にあります。国内での特許出願を基礎として、パリ条約やPCT条約を活用した外国出願を促進することで、日本企業の技術やブランドの海外での適切な保護を実現し、国際競争力の向上を図っています。
事業の目的と背景
本事業の根本的な目的は、日本の中小企業が持つ優れた技術やブランドを海外市場で適切に保護し、競争優位性を確保することにあります。近年のグローバル化の進展により、模倣品や権利侵害の問題が深刻化している中、適切な知的財産戦略なしに海外展開を行うことは極めてリスクが高いと言えます。特に中小企業においては、限られた資源の中で効率的な権利化戦略を立案・実行する必要があり、そのための支援が不可欠となっています。
また、日本国内での特許出願件数は近年横ばいで推移している一方、海外での日本企業による特許出願件数は増加傾向にあります。これは日本企業の海外展開意欲の高まりを示していますが、同時に海外での権利化コストの負担が企業経営を圧迫している現状も浮き彫りになっています。本事業は、こうした課題を解決し、日本の技術力を世界に発信するための重要なインフラとして機能しています。
対象となる企業と要件
本事業の申請者となれるのは、中小企業基本法に基づく中小企業、中小スタートアップ企業、小規模企業、大学等の研究機関です。中小企業については、製造業では資本金3億円以下または従業員数300人以下、小売業では資本金5千万円以下または従業員数50人以下など、業種ごとに詳細な定義が設けられています。重要な要件として、国内弁理士等の専門家の協力が得られることが挙げられており、適切な知的財産戦略の立案と実行をサポートする体制が求められています。
申請企業には、税金の滞納がないこと、暴力団等との関係がないこと、過去に補助金等の返還命令を受けていないことなど、コンプライアンス面での要件も課されています。また、同一の発明等について複数の国・地域への出願を行う場合でも、全体として戦略的かつ合理的な計画であることが求められます。単なる権利取得ではなく、実際の事業展開を見据えた戦略性が重視されるポイントです。
助成対象となる出願の種類
助成対象となるのは、日本国特許庁に行った出願と同一内容の外国出願です。具体的には、パリ条約等に基づく優先権主張を伴う外国出願、国内出願を基礎としたPCT国際出願の外国段階移行などが対象となります。発明特許、実用新案、意匠、商標のすべての産業財産権が対象となっており、企業の事業戦略に応じて柔軟に活用することができます。
ただし、すべての外国出願が対象となるわけではなく、日本での出願を基礎としていることが必須条件となっています。これは、日本企業が日本国内で創出した知的財産を海外で適切に保護することを支援するという事業趣旨に基づいています。また、出願する国・地域についても、企業の実際の事業展開計画や市場戦略との整合性が求められ、単なる権利取得のための出願は対象外となる可能性があります。
申請手続きと必要書類
申請手続きは、申請書類送付フォームを利用する電子申請と郵送による申請の2つの方法が用意されています。申請には、申請書、事業計画書、財務諸表、税務申告書の写し、弁理士等との委任契約書など、多岐にわたる書類の提出が必要です。特に事業計画書については、海外展開の具体的な戦略、対象国・地域の市場分析、知的財産活用計画などを詳細に記載する必要があり、申請の成否を左右する重要な書類となります。
申請書類の提出期限は、外国特許庁が指定する期限内に設定されており、特許出願の場合は優先権主張期間である12ヶ月以内、商標出願の場合は6ヶ月以内などの制約があります。そのため、国内出願を行った段階で海外展開計画を検討し、早期に申請準備を開始することが重要です。また、申請後の審査期間も考慮して、余裕を持ったスケジュール管理が求められます。
助成対象経費と補助率

中小企業海外展開支援事業における助成対象経費は、海外での知的財産権取得に直接的に必要な費用に限定されており、明確な基準が設けられています。これにより、企業は予算計画を立てやすく、効率的な申請準備を行うことができます。補助率と上限額についても詳細に規定されており、企業規模や申請内容に応じた公平な支援が実現されています。
助成対象経費の範囲と補助率の設定は、中小企業の負担軽減と制度の持続可能性のバランスを考慮して決定されています。企業側の一定の負担を求めることで、真に必要な出願に対象を絞り込み、制度の効果的な活用を促進しています。また、手続きの種類に応じて異なる上限額を設定することで、多様な知的財産戦略に対応できる柔軟性を確保しています。
対象となる経費の詳細
助成対象経費には、外国特許庁への納付手数料、現地代理人費用、国内代理人費用、翻訳費用が含まれます。外国特許庁への納付手数料は、出願料、審査料、登録料など、権利化に直接必要な公的手数料が対象となります。現地代理人費用については、外国での特許出願や中間手続きを行うために必要な現地弁理士や特許事務所への報酬が含まれます。これらの費用は国・地域によって大きく異なるため、事前の調査と見積もり取得が重要です。
翻訳費用については、出願書類や中間書類の翻訳に要する費用が対象となります。特許明細書の翻訳は専門性が高く、品質によって権利範囲に影響を与える可能性があるため、適切な翻訳者の選定が重要です。国内代理人費用は、国内弁理士等が海外出願をサポートするための費用であり、戦略立案から書類作成、現地代理人との調整まで幅広い業務が含まれます。ただし、企業内部の人件費や一般管理費は対象外となります。
補助率と上限額の仕組み
補助率は助成対象経費の2分の1以内と設定されており、企業側も相応の負担を行うことで、制度の適切な活用を促しています。補助上限額は手続きの種類によって異なり、出願手続きの場合は1法人(個人)当たり300万円以内、中間応答等の場合は1手続(各国別)当たり50万円となっています。この上限設定により、多くの企業が制度を利用できるよう配慮されています。
出願手続きの上限額300万円は、複数国への同時出願や複数の案件の同時申請にも対応できる金額設定となっています。一方、中間応答等の上限額50万円は、拒絶理由通知への応答や審査請求など、個別の手続きごとに適用されます。これにより、長期間にわたる権利化プロセス全体をサポートできる制度設計となっています。また、年度をまたぐ申請も可能であり、企業の事業計画に合わせた柔軟な活用が可能です。
費用対効果の考慮点
助成金を活用する際は、費用対効果を慎重に検討する必要があります。海外での権利化には多額の費用がかかりますが、助成金があることで企業の負担は大幅に軽減されます。ただし、権利を取得した後の維持費用(年金等)は助成対象外であるため、長期的な費用計画を立てることが重要です。また、権利化によって得られる事業上のメリット(ライセンス収入、模倣品対策、競争優位性確保等)を具体的に見積もり、投資回収の見通しを立てることが必要です。
特に重要なのは、出願国・地域の選定です。市場規模、競合他社の状況、模倣品リスク、法制度の整備状況などを総合的に勘案して、戦略的に出願国を決定する必要があります。助成金があることで多くの国に出願したくなりがちですが、維持費用や管理コストも考慮して、真に必要な国・地域に絞り込むことが重要です。専門家と相談しながら、自社の事業戦略に最適な知的財産ポートフォリオを構築することが成功の鍵となります。
申請時の予算計画
申請時には詳細な予算計画の策定が必要です。各経費項目について、複数の業者から見積もりを取得し、適正な価格設定であることを確認します。特に翻訳費用については、文書の分量や専門性の程度によって大きく変動するため、正確な見積もりが重要です。また、為替変動による影響も考慮し、一定のバッファーを設けることが賢明です。
予算計画の策定にあたっては、申請から実際の支払いまでのキャッシュフローも考慮する必要があります。多くの助成金制度は後払い方式であるため、一時的な資金負担が発生します。特に複数国への同時出願を行う場合は、まとまった資金が必要となるため、事前の資金調達計画も重要です。金融機関からの借入や他の支援制度との併用なども検討し、総合的な資金計画を立てることが求められます。
地方自治体独自の支援制度

国の支援制度に加えて、各地方自治体では独自の海外展開支援制度を設けており、地域の特色を活かした多様な支援メニューを提供しています。これらの制度は、国の制度と併用できる場合も多く、企業にとってより手厚い支援を受けられる機会となっています。地域の産業構造や企業ニーズに応じてカスタマイズされた支援内容が特徴的で、地域密着型のきめ細かいサポートが期待できます。
地方自治体の支援制度は、知的財産権の取得支援だけでなく、市場調査、展示会出展、現地パートナー開拓、認証取得など、海外展開のあらゆる段階をカバーしています。また、地域内企業同士の連携促進や、地域ブランドの海外展開など、単独企業では実現困難な取り組みについても支援を行っています。企業は自社の所在地の制度を積極的に活用することで、より効率的な海外展開を実現できます。
北九州市の支援制度
北九州市では「北九州市中小企業海外展開支援助成金」制度を設け、市内中小企業の積極的な海外展開を後押ししています。この制度では、市場調査、海外見本市出展、越境EC販路開拓、各種認証取得などの幅広い経費を助成対象としており、企業の多様なニーズに対応しています。特に注目すべきは、米国関税措置の影響を受ける企業に対する特別措置で、助成率を通常の2分の1から3分の2に引き上げ、利用回数も年1回から2回まで拡充するなど、時代の変化に応じた柔軟な支援を実施しています。
対象企業は中小企業基本法上の中小企業で、北九州市内に事務所または事業所を有し、市税を滞納していないことが条件となります。申請期間は令和7年4月1日から令和8年3月31日までと設定されており、年度内での計画的な申請が必要です。北九州市は製造業が集積する工業都市としての特色を活かし、特にものづくり企業の海外展開に重点を置いた支援を行っており、地域の産業構造に適した制度設計となっています。
愛知県の支援制度
愛知県では、県内中小企業を対象とした海外知的財産権取得支援制度を運営しており、特許、実用新案、意匠、商標の海外出願に要する経費の一部を補助しています。補助率は対象経費の2分の1以内で、1企業あたり最大300万円という国の制度と同等の上限額を設定しています。さらに、権利の種類に応じて細かく上限額を設定しており、特許150万円、実用新案・意匠・商標60万円、冒認対策商標30万円という具体的な基準を設けています。
愛知県の制度の特徴は、審査における加点制度の充実です。地域未来牽引企業、賃上げ実施企業、ワーク・ライフ・バランス推進企業などの認定・表彰を受けた企業は加点対象となり、採択の可能性が高まります。また、申請方法についても、従来の郵送申請に加えて補助金申請システム「jGrants」の併用を必要とするなど、デジタル化への対応を進めています。事前申込みが必須となっているため、十分な準備期間を設けて申請に臨むことが重要です。
その他の自治体制度
全国各地の自治体では、それぞれの地域特性を活かした独自の海外展開支援制度を実施しています。例えば、東京都では「外国特許出願費用助成事業」として、都内中小企業の外国特許出願費用を助成しており、上限額や対象要件について独自の設定を行っています。大阪府では「海外展開チャレンジ支援事業」として、知的財産権取得から市場開拓まで総合的な支援を提供しています。
地方の自治体においても特色ある支援制度が見られます。例えば、伝統工芸品の産地である自治体では、地域ブランドの商標登録支援に重点を置いたり、農業県では農産物の地理的表示保護制度の活用支援を行ったりしています。これらの制度を活用する際は、申請時期、対象要件、必要書類などが自治体ごとに異なるため、所在地の自治体の制度内容を詳細に確認し、計画的に申請準備を進めることが重要です。
国の制度との併用メリット
地方自治体の制度と国の制度を併用することで、企業の負担をさらに軽減できる場合があります。ただし、同一の経費について重複して補助を受けることはできないため、異なる項目の経費に対してそれぞれの制度を適用するか、時期を分けて申請するなどの工夫が必要です。例えば、国の制度で特許出願費用の支援を受け、自治体の制度で市場調査費用の支援を受けるといった組み合わせが考えられます。
併用を検討する際は、各制度の申請時期、審査期間、支払い時期などを調整し、企業のキャッシュフローに配慮した計画を立てることが重要です。また、複数の制度を利用することで事務負担が増加するため、専門家のサポートを受けながら効率的な申請管理を行うことが推奨されます。地域の支援機関や商工会議所などでは、複数制度の併用に関する相談にも対応しているため、積極的に活用することをお勧めします。
申請プロセスと成功のポイント

助成金申請の成功は、適切な申請プロセスの理解と戦略的な準備によって大きく左右されます。申請から採択、実行、完了報告まで一連の流れを把握し、各段階で求められる要件を確実にクリアしていくことが重要です。特に、申請書類の作成段階では、事業の戦略性や実現可能性を明確に示すことが求められ、審査員の視点を意識した説得力のある内容に仕上げる必要があります。
成功のポイントは、単なる書類作成のテクニックにとどまらず、企業の海外展開戦略全体との整合性、知的財産戦略の妥当性、実行体制の確実性など、多面的な要素を考慮することです。また、申請後の審査期間中や採択後の実行段階においても、適切な進捗管理と柔軟な対応が求められます。専門家との連携や他の採択企業との情報交換なども、成功確率を高める重要な要素となります。
申請前の準備段階
申請前の準備段階では、まず自社の海外展開戦略の明確化が必要です。どの国・地域をターゲットとするのか、どのような商品・サービスで展開するのか、競合他社の状況はどうか、市場規模や成長性はどの程度かなど、具体的なデータに基づいた戦略を構築します。この段階で、知的財産権の取得がなぜ必要なのか、どのような効果を期待するのかを明確にしておくことが重要です。
次に、申請要件の詳細確認と必要書類の準備を行います。中小企業の定義、税金の納付状況、過去の補助金受給歴など、基本的な要件から確認し、不備がないよう慎重にチェックします。財務諸表や税務申告書などの公的書類は最新版を用意し、事業計画書については専門家のアドバイスを受けながら説得力のある内容に仕上げます。弁理士等の専門家との連携体制も、この段階で確実に構築しておく必要があります。
申請書類の作成ポイント
申請書類の中でも特に重要なのが事業計画書です。海外展開の背景と目的、対象市場の分析、競合他社との差別化戦略、知的財産活用計画、収支計画など、論理的で説得力のある構成で記述する必要があります。審査員は多数の申請書類を審査するため、要点を明確に示し、図表やグラフを効果的に活用して視覚的にも分かりやすい資料に仕上げることが重要です。
知的財産活用計画については、単なる権利取得にとどまらず、取得後の活用方法や事業への具体的な効果を明示することが求められます。ライセンス戦略、模倣品対策、ブランド戦略などとの関連性を示し、投資回収の見通しについても具体的な数値で示すことが効果的です。また、リスク要因とその対策についても言及し、現実的で実行可能な計画であることをアピールします。
審査基準と評価のポイント
審査では、事業の戦略性、実現可能性、効果性、継続性などが総合的に評価されます。戦略性については、明確な市場分析に基づいた論理的な展開計画が求められ、単なる思いつきや漠然とした計画では評価されません。実現可能性については、企業の財務状況、技術力、人的資源、パートナー企業との関係などを総合的に判断し、計画を確実に実行できる能力があるかが評価されます。
効果性については、投資に対するリターンの見込み、雇用創出効果、地域経済への波及効果などが評価されます。継続性については、一時的な支援に依存するのではなく、自立的に事業を継続・発展させる能力があるかが重要な評価ポイントとなります。審査員の多くは企業経営や知的財産に関する専門知識を有しているため、表面的な記述ではなく、深い洞察に基づいた実質的な内容が求められます。
採択後の実行管理
採択通知を受けた後は、計画に従って確実に事業を実行していく必要があります。特に外国出願については、優先権主張期間などの法的期限があるため、スケジュール管理が極めて重要です。弁理士等の専門家と密接に連携し、各国の法制度や手続き要件を確認しながら、適切に手続きを進めていきます。また、為替変動や現地の法制度変更など、計画策定時には予想困難な事態に対しても柔軟に対応する必要があります。
実行段階では、定期的な進捗報告や中間報告が求められる場合があります。計画との乖離が生じた場合は、速やかに事務局に相談し、必要に応じて計画変更手続きを行います。また、実行過程で得られた知見や教訓は、今後の事業展開に活かすとともに、完了報告書に反映させることで、制度の改善にも貢献できます。他の採択企業との情報交換会やセミナーなどにも積極的に参加し、ネットワーク構築を図ることも重要です。
その他の関連支援制度

中小企業の海外展開を支援する制度は、知的財産権関連の助成金だけにとどまらず、設備投資、販路開拓、人材育成、資金調達など、事業活動の様々な側面をカバーする多様な制度が存在します。これらの制度を戦略的に組み合わせて活用することで、海外展開の成功確率を大幅に向上させることができます。また、民間金融機関による融資制度や信用保証制度なども充実しており、資金調達面での選択肢も豊富に用意されています。
重要なのは、これらの制度を個別に利用するのではなく、自社の事業戦略に沿って体系的に活用することです。例えば、製品開発段階ではものづくり補助金を活用し、知的財産権の取得段階では外国出願補助金を利用し、市場開拓段階では展示会出展支援を受けるといった段階的な活用が効果的です。専門家のアドバイスを受けながら、最適な支援制度の組み合わせを見つけることが成功の鍵となります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は、中小企業等が行う革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する制度です。海外展開を目指す企業にとっては、輸出向け製品の開発や海外市場のニーズに対応した製品改良などに活用できる重要な制度です。補助上限額は類型により異なりますが、一般型で最大1,250万円、グローバル展開型では最大3,000万円の支援を受けることができます。
この制度の特徴は、単なる設備更新ではなく、革新性や生産性向上効果が明確な事業に対して支援を行う点です。海外展開を目指す企業の場合、国際的な品質基準への対応、現地のニーズに合わせた製品仕様の変更、生産効率の向上による価格競争力の強化などの目的で活用できます。申請には事業計画の策定が必要であり、3〜5年間の付加価値額や給与支給総額の向上目標を設定し、その達成状況について事業完了後も報告する義務があります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。海外展開に関連する活動としては、海外向けのウェブサイト作成、多言語パンフレットの制作、海外展示会への出展、輸出に必要な認証取得などに活用することができます。補助上限額は通常枠で50万円、特別枠では最大200万円となっており、小規模な海外展開の初期投資に適した制度です。
この制度は手続きが比較的簡素で、申請しやすい制度として多くの小規模事業者に利用されています。商工会や商工会議所のサポートを受けながら申請することができ、経営計画の策定から実行まで一貫した支援を受けることが可能です。海外展開を検討している小規模事業者にとっては、まず国内での基盤固めと並行して海外市場の調査や準備を行う段階で活用できる制度として位置づけることができます。
JAPANブランド育成支援事業
JAPANブランド育成支援事業は、複数の中小企業等が連携して行う海外展開の取り組みを支援する制度です。地域の特色を活かした商品やサービスを「ブランド」として確立し、海外市場での認知度向上と販路拡大を目指す事業に対して支援を行います。補助率は3分の2以内、補助上限額は200万円(3年間総額)となっており、個社では実現困難な規模の海外展開活動を可能にします。
この事業の特徴は、単独企業ではなく複数企業の連携による事業であることです。地域の伝統工芸品、農産物、工業製品などについて、関連企業が連携してブランド化を図り、共同で海外市場に挑戦します。プロジェクトには民間企業だけでなく、地方自治体、商工会議所、業界団体なども参画し、官民連携による総合的な支援体制を構築します。知的財産権についても、地域ブランドの商標登録や地理的表示保護制度の活用などが重要な要素となります。
政府系金融機関による融資制度
日本政策金融公庫や国際協力銀行(JBIC)などの政府系金融機関では、中小企業の海外展開を支援する様々な融資制度を提供しています。日本政策金融公庫の「海外展開資金」では、海外での現地法人設立、設備投資、運転資金などに対して、通常よりも優遇された金利での融資を受けることができます。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)と設定されており、海外展開に必要な資金を幅広くカバーしています。
これらの融資制度は、助成金と異なり返済義務がありますが、審査基準が明確で、計画的な資金調達が可能です。また、融資実行までの期間も比較的短く、海外展開のタイミングに合わせた柔軟な資金調達ができます。信用保証協会による保証制度と組み合わせることで、担保や保証人の負担を軽減することも可能です。海外展開には相当な資金が必要となるため、助成金と融資制度を適切に組み合わせた資金計画を策定することが重要です。
まとめ
中小企業の海外展開を支援する助成金制度は、国や地方自治体により多様で充実した内容が提供されており、企業の発展段階や事業内容に応じて最適な制度を選択・活用することが可能です。特に中小企業海外展開支援事業を中心とした知的財産権関連の支援制度は、海外での権利保護という重要な課題に対して実質的な解決策を提供しており、多くの企業の海外展開成功に貢献しています。
これらの制度を効果的に活用するためには、まず自社の海外展開戦略を明確にし、その戦略に沿った知的財産戦略を策定することが重要です。単なる資金支援の受給にとどまらず、専門家との連携、他企業との情報交換、継続的な学習と改善を通じて、持続可能な海外事業の基盤を構築していくことが求められます。また、国際的な事業環境の変化に対応するため、常に最新の制度情報を収集し、柔軟な戦略見直しを行う姿勢も重要です。今後も政府は中小企業の海外展開支援を重要政策として位置づけており、これらの制度を積極的に活用して、グローバル市場での競争力向上を目指していただきたいと思います。
よくある質問
中小企業海外展開支援事業の目的は何ですか?
p. 本事業の根本的な目的は、日本の中小企業が持つ優れた技術やブランドを海外市場で適切に保護し、競争優位性を確保することにあります。グローバル化の進展により、模倣品や権利侵害の問題が深刻化している中、中小企業が効率的な知的財産戦略を立案・実行できるよう支援することが重要な課題となっています。
助成対象となる経費にはどのようなものがありますか?
p. 助成対象経費には、外国特許庁への納付手数料、現地代理人費用、国内代理人費用、翻訳費用が含まれます。これらの費用は国・地域によって大きく異なるため、事前の調査と見積もり取得が重要です。また、企業内部の人件費や一般管理費は対象外となります。
補助率と上限額はどのように設定されていますか?
p. 補助率は助成対象経費の2分の1以内と設定されており、企業側も相応の負担を行うことで、制度の適切な活用を促しています。補助上限額は手続きの種類によって異なり、出願手続きの場合は1法人当たり300万円以内、中間応答等の場合は1手続当たり50万円となっています。これにより、多くの企業が制度を利用できるよう配慮されています。
地方自治体の支援制度との併用はできますか?
p. 地方自治体の支援制度と国の制度を併用することで、企業の負担をさらに軽減できる場合があります。ただし、同一の経費について重複して補助を受けることはできないため、異なる項目の経費に対してそれぞれの制度を適用するか、時期を分けて申請するなどの工夫が必要です。併用を検討する際は、各制度の申請時期、審査期間、支払い時期などを調整し、企業のキャッシュフローに配慮した計画を立てることが重要です。
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